(2)フィンランド
1)造船関連産業の特徴
フィンランドの造船産業に関するデータを表5-1-3に示す。
表5-1-3 フィンランドの造船産業関連データ
[造船関連]
・新造船受注量(1995年):4隻 179,000G/T(世界シェア:0.7%)
・新造船竣工量(1995年):8隻 316,000G/T(1.6%)
・新造船手持工事量(1996年3月末):12隻 732,000G/T(1.6%)
[その他]
・GDP(1995年、10億US$):126(0.5%:対OECD加盟国GDP合計比)
(出所:各種資料よりMRI作成)
フィンランドもノルウェーと同様、造船関連の世界シェアは低いが、クバーナ・マサヤーズのように特殊船に強い造船所や、ヴァルツィラのように世界有数の舶用機器メーカが存在する。特徴としては、以下のような点があげられる。
・客船、フェリー、RORO船、LNG船等の特殊船に強く、関連舶用機器、例えば客船用トイレやキャビン、あるいはLNG船用カーゴ・ホールド等も高シェアを占める企業が多い。
・ヴァルツィラはフィンランドの顔であるが、1997年にスイスのスルザーを吸収合併して、名実ともに世界最大の舶用ディーゼルエンジンメーカとなっている。
・他の北欧諸国と同様、かつては造船が盛んであったため、エンジニアリング力も発達し、現在もデルタマリンのように、世界に広く知られるエンジニアリング企業がある。
フィンランドにおける特徴的な造船関連機関・企業を表5-1-4に示す。
2)研究開発体制・事例
フィンランドでは、政府関連では海事管理局が安全航行、氷海域航行等に関する研究開発のコーディネート、技術開発センター(通称TEKES)が研究開発プロジェクトの企画、運営、予算配分を行い、フィンランド技術研究センター(通称VTT)がプロジェクトの実施や、個別企業の技術開発のサポートを行っている。
VTTには9つの研究所があるが、そのうちの1つ、VTT生産技術研究所の中に輸送関連技術を研究する分野があり、そこで、造船、海運、氷海域航行、小型船舶技術等に関する研究を行っている。
また、VTTとヘルシンキ工科大学が合弁でフィンランド海事研究所を設立しており、主に船舶・海洋分野の研究を、企業や他国の機関等と共同で行っている。
例えば、以下のような研究開発事例がある。
・VTT生産技術研究所における主要なプロジェクト
・FRPサンドイッチ構造と金属との接合技術の開発
・作業船の統合設計法
・海洋環境等に関するデータの双方向オンライン・ネットワークの構築