テーマの決定に関しては、特に評価基準があるわけではなく、議論を煮詰めながら決めていく。これは、行政施策を決めていくのと同じプロセスである。
ニーズの取り込みという面では、今までは国民から広く聞いていくという姿勢を取っていない。また学会からのニーズもあまり聞いていないので、今後は、両者からのニーズも聞いていきたいとのことである。
?予算配分の基準
総プロの場合、予算は、各テーマの中で予算項目としてすでに入っている。まれに2億円というのもあるが、年間1億円で5年間というのが標準的である。また、総プロは、国と民間がそれぞれ金を出し合って一緒に技術開発を行うというスタイルである。
?体制と産学官の役割
基本的には、テーマごとに臨機応変に体制を組んでいる。ただし、土木研究所や建築研究所が中心となって、民間からの参画を公募し、共同研究をするという形が多い。
共同研究の契約は、参加企業と各研究所が個々に結ぶのが一般的である。ただし、複数の企業が共同研究するようなことは慣習的にほとんどない。
参加企業は自社の研究所で研究を行うケースと、研究者(部分研究員という)を土木研究所や建築研究所に派遣するケースがあるが、前者のほうが多い。
通産省で実施している技術研究組合や推進団体のような仕組みは基本的にないが、現在実施されているITS(後述)で初めてそのような体制ができたと言える。
なお、大学の研究者は、各プロジェクトの中で組織される研究委員会に参加し、アドバイザー的な役割を担っている。彼らが実際に研究に関わることはないが、これは、総プロが応用開発中心で、基礎研究がほとんどないということが背景にある。
?進捗管理の方法
プロジェクトの期間は3〜5年であるが、毎年成果報告を行っている。本省官房の直轄なので、通常業務の中で管理しているといってもよい。
今までプロジェクト期間が短縮された事例はないわけではないが、ほとんど計画どおりに実施されている。なお、期間が延長される事例は複数あり、例えば地震関連の研究開発では、阪神大震災があった関係で延長された。
?主な成果とその活用の実態
建設省の研究開発というのは、その成果を公共事業に使う、あるいは公共事業における基準として使うというのが基本方針なので、直接行政に反映されることが多い。
具体的な成果の事例を表4-2-2に示す。表に示されているように、研究開発の成果を各種規制、対策、試験方法、施工法、設計法、マニュアル等に活用していることがわかる。
?知的所有権の取り扱い
例えば、研究開発で新しい工法のアイデアが生み出されたような場合に特許を取ることもあるが、防衛特許的な意味合いが強い。
プロジェクトの内容は公共性が前提となっているが、基本的には、共同研究開発では成果の内容によって100%国のものになるか、もしくは国と企業での持ち分(基本は半々)が決められる。