3-4 調査結果のまとめ
(1)造船所の視点からの研究開発環境の傾向
アンケートの各設問に対し各回答者が付記した具体的なコメントの方に着目すると、研究開発管理者及び研究開発者の回答ともに、
?日常業務の狭い範囲における不平・不満的なもの
?昔からよく言われているような思いつき的内容の域を出ないもの
?現状打破のために従来とは異なる視野に立脚したもの
にはっきり分かれている。
?、?のようなコメントがいまだに出てしまうところが現状の進歩の無さを如実に表わしているが、一方?は高度技術創出環境実現のヒントを示唆していると考えられる。
?、?の典型的な特徴をいくつか挙げると、
・研究開発予算がつきにくいのは経営が弱体化し予算規模が縮小したからであると思っている。経営ニーズ実現とのつながりが不透明だから、という観点は乏しい。
・アイデアが社会に認められない、あるいは顧客に受け入れられないという経験に対し、「これはシーズとしては正しいが社会・顧客が未熟で時期尚早」という発想をする。
となり、これに対比して?は
・研究開発予算がつきにくいのは経営ニーズ実現とのつながりが不透明だからである、という反省がある。経営ニーズ実現と研究開発テーマの相関関係を明確に示す必要性を感じている。
・アイデアが社会に認められない、あるいは顧客に受け入れられないという経験に対し、「社会ニーズ・顧客ニーズに合わないアイデアは単なる自己満足でナンセンス」という反省がある。
と表現できるであろう。このような反省に立って、研究開発における意識改革、あるいはそれを含めた新しい研究開発体制の構築を図っていく必要がある。
(2)船主の視点からの研究開発環境の傾向
1)開発資金と人材
研究開発業務に従事する人材が激減しているが、人件費の高い日本においては、もはや増員を望むことは難しい。そこでどれだけ少ない人材を活性化させ成果を生むかがポイントとなる。
その解決法の一つとして、意思決定や情報コミニケーションをシステム化することで、個人の自由な発想を有機的に組織として結合させ、この人材不足を切り抜けようという考え方がある。しかし、人員が激減した組織に属する個人の潜在的能力を倍増化することは非常に難しい。やはり人員の減少に少しでも抗するには、個人そのものの資質を上げるしか無いのではないか。