食い違いやギャップの主な内容は以下のとおりである。最初の3つにあるように、研究開発者側での開発の意図と、特に船主側のコストに対する意識がかみ合わずに、成果が採用されなかったというコメントが非常に多かった。また、ニーズそのものが統一的でないというコメントもかなり見られた。
・船主の船価に対する意識(採算性)と高性能化等に伴うコストとのギャップ。
・リスク(安全性)に対する評価が異なり、船主はパワーや採算性のみを重視する。
・船主には良い技術を高く買う姿勢がない。
・造船所が既存の技術にこだわり、顧客ニーズに応じない傾向がある。
・例えば船内環境の設計条件については、造船所、船主、クルーのニーズが異なる。
・船主側のニーズが営業部門(荷主サイド)と保障部門で異なる。
・船主側のニーズが具体的に示されない。
(6)日本の造船業の強み・弱み
図3-10は、日本の造船業の強み、弱みに関する研究開発者の見解を示したものである。強みとなっているのは、「性能関連の要素技術開発」、「既存船舶の設計」、「既存船舶の建造」の3つであり、弱みとなっているのは「企画・コンセプト作り」、「新コンセプト船舶の設計」、「新コンセプトを船舶に結びつける商品化力」の3つである。既存船舶に対する設計・生産技術力は強いが、新しい船舶を企画・設計・商品化する力が弱いという見解が明確に出ている。