4.7 溶接ロボット移動装置の検討と設計
ガントリー型ロボットは、XYZの3方向に移動可能なマニプレータの先端に多関節ロボットを天吊姿勢で取り付けたものが一般的であり、色々な軸構成が考えられる。特に、複数のロボットを同一のガントリー上に構成するマルチロボットシステムでは、対象ワークの形状特性ならびに溶接線の方向を十分に検討して設計する必要がある。
図4.15は、4種類の軸構成に関して検討したものである。ここでは4台のロボットを想定し移動機構検討を行った。また、対象ワークの設置はガントリーの長辺方向にロンジが平行になるようにしている。
第1案は、天吊ロボットが専用のXYZ軸を有するもので最も標準的な形である。今回対象となる曲外板ブロックは、ロンジとトランスから構成される升目構造部分を溶接の基本単位としており、使用頻度の高い隣接する升目間の移動には、昇降軸(Z軸)と横行軸(X軸)が利用される。そしてトランス間の移動にはY軸が利用される。軸動作に関する制約もなく、制御方式もY軸相互の干渉をチェックするだけで済むので、シンプルなものでよい。ただし、Y方向に4列ものガーダーが配置されており、Y軸相互の干渉が頻繁に発生する可能性が含まれている。
第2案は、ロボットの動作範囲を、左右に2分割したものである。ガントリー中央部分にガーダーを受けるための梁をめぐらし、X軸方向に動作するガーダーを2式ずつ配置している。対象ワークの作業が中央部分で2分割される場合には適しているが、それ以外の場合には、ロボット動作を制限する形となっている。また、頻繁に動作するX軸が大型のガーダー機構になっている点も好ましくない。
第3案は、1ならび2案の改良案であり、Y方向に動作する走行軸(YG軸)を追加している。ロボットを天吊するXYZ軸は2案をスケールダウンした構成とすることで、使用頻度の高い部分が軽量コンパクトな軸配置となっている。また、左右のYガーダー上に2式XYZ軸を搭載することで、Y方向のガーダーの相互干渉を少なくしているとともに全体的な剛性を高めている。ただし、図4.11に示したように傾斜しているトランスヘのアクセスのためのR軸がY軸と重複する形となり冗長な軸構成となる。
第4案は、第1案の改良型であり、Yガーダー上にロボットを天吊する2式のXZ軸を配置している。軸構成はシンプルであるが、2台のロボットがY軸を共用しているため、制御インターロック等複雑な制御が必要となる。
第3案と第4案との比較においては、第3案がむしろ望ましい全体軸構成であるが、コスト高となることより、今回は第4案を採用する事とする。