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(4)養殖魚の摂餌量と水の汚濁負荷量

魚が健康な成長を続けるためには、適切な投餌量管理が必要である。海面養殖の場合、投餌量の20%程度はそのまま環境水に放出されるが、陸上養殖ではムダになる餌はほぼゼロに近いので、魚に対する最適給餌率を把握しておけば投餌量管理は容易である。ただし、摂餌に伴う環境水への汚濁負荷量は、与えた餌の量(魚の飼育量)や水温によって大きく変動するので、養殖対象魚種の成長性や生態に合わせた適切な投餌量の管理と、それに伴う汚濁負荷量の算定が必要となる。

投餌量と汚濁負荷量の関係については、以下のような算出方法がある。

イ)エネルギー収支で見る方法

肉食魚を対象として、餌を十分に与えたものどする。摂餌総エネルギーを100%とすると、消化吸収される可消化エネルギーは80%で、未利用状態のエネルギーが20%糞として排出される。吸収されたエネルギーのうち、代謝に伴う老廃物として7%が尿として排出され水を汚染する。さらに、吸収されたエネルギーの14%が消化吸収に伴う代謝エネルギーとして使われる。また、成長には45%が使われるが、エネルギーの取り込み量が不足するとこの値はゼロまで下がる。

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ロ)餌料に対する窒素収支としてみる方法

ハマチの飼育に伴う汚濁負荷量を、餌料に含まれる窒素の動態として求める試験が和歌山県水産試験場や高知県水産試験場で行われている。それによると、投餌窒素量を100とした場合、窒素の動きは溶解物質として4〜5%、懸濁物質として1.9〜7%、残餌に1.9〜5%が回り、窒素負荷量の合計は9.7%〜39%と推測された数値に大きなバラツキがあるが、これは餌の種類や形状或いは対象魚の体重や飼育方法の違いによるものである。

人間の場合、一人一日当たり12gの有機窒素を排泄するとの報告があるが、ほとんどの動物において、体重と代謝の関係は、一定の関数として表わすことができる(Paloheir&Dickie1966、Hepher1988)24)し、魚類の場合でも体重と窒素排泄量の関係を関数で表示する事は可能である(Jobling1981、Hepher1988)25)。すなわち、各魚種について給餌量、成長速度、糞排泄量、残餌量がわかれば、代謝に伴う溶存態窒素(アンモニアと尿素)の排泄量を導き出すことが可能である。

 

 

 

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