4.3 船殻詳細構造表現力の充実
ここでは、構造設計FLの拡張のうち「幅方向の拡張」について述べる。本開発研究では「幅方向の拡張」として、既存CADが表現している詳細構造表現能力の拡張など、モデルのカバー範囲の拡大を行う。
4.3.1 表現可能な構造の拡大
(1) 必要性
本開発研究では先のGPME開発研究で開発された構造設計FLを拡張し、実用レベルのFLとすることを目指している。
現状のGPMEの構造設計FLは、サンプルアプリケーションが動く範囲を対象に作成したものであるが、船殻主要構造に関してはかなりの程度で実船構造を表現することが可能である。一方、船殻詳細形状に関しては、それを必要とするようなサンプルアプリケーションがなかったので、スロット形状など一部を除いてその表現能力は十分とは言えない。それで、実船の詳細構造を実用レベルで表現するためには、スティフナ端部形状、板部材コーナー、スカラップ形状などについて大幅な拡張が必要である。
また、船殻詳細構造は通常詳細設計時点で確定されるが、ブロック分割検討時点や設計初期の工法検討時点においても、検討対象部分に関してはスロット詳細形状を検討するなど、現実の設計では工法上重要部分の詳細構造形状は、設計初期から検討対象となる場合が多い。
本開発研究では工程設計業務を対象にシステムを実装することを考えているが、この際にも詳細構造は設計対象であり、実船の詳細構造が表現できるようにGPME FLの拡張を行う。
(2) GPME FLの詳細構造表現能力
図4.3-1にGPMEの詳細構造情報表現範囲を示す。これは主要な船殻詳細構造に対してGPME FLの表現可否を示している。図に示すように、トリッピングブラケットやロンジのねじれ、骨の端部形状など、実船構造を表現するには詳細構造についてかなりの拡張が必要であることが分かる。