フォームを超えた分散オブジェクト環境の構築を図ることとする。
2.2.3 高度造船CIM実現のためのリファレンスアーキテクチャ
前述したように、ネットワーク上に分散しているアプリケーションやデータを統合化し、知識共有を実現するためには、ORBによる分散オブジェクト環境が必要である。この分散オブジェクト環境を基盤として高度造船CIMを構築していくに当たり、その指針となるリファレンスアーキテクチャを制定する必要がある。
OMGではCORBAに基づいたアーキテクチャとしてOMA(Object Management Architecture)を示しており、その構成要素として、以下の4つのモジュールを挙げている。
・サーバーオブジェクトとクライアントオブジェクトから構成されるアプリケーション
・オブジェクトに基本的な操作を提供するためのオブジェクトサービス
・オブジェクトサービスに比べてより高度で汎用的な機能である共通機能(Common Facility)
・ビジネス用のアプリケーションを対象とするサービスを集めたVertical Domain
このOMAを参考にしながら、本開発研究で目指す知識共有に基づく高度造船CIMのリファレンスアーキテクチャとしては、以下に示す項目を十分考慮する必要がある。
・船という製品に関する知識を表現したPMが、システム構成要素として重要な位置を占めること
・分散環境における高度な協業支援を行うためには、汎用的かつ高度なユーザー支援機能を提供する必要があること
・PMに基づいて、構造設計や配管設計など造船業固有の業務を効率的に支援するサービスを提供する必要があること
・既存CADシステムなど造船所において実業務に適用されている様々なアプリケーションとの統合が実用的観点から非常に重要であること
以上を考慮し、本開発研究ではORBに基づく高度造船CIMのリファレンスアーキテクチャとして、図2.2-2に示すアーキテクチャを提案する。なお、このリファレンスアーキテクチャを高度造船CIM(Advanced CIM for Shipbuilding)に因んで、ACIMリファレンスアーキテクチャと呼ぶこととする。
このアーキテクチャでは、ファシリティーやサービスなどの機能コンポーネント群をその機能的位置付けから6つのカテゴリーに分類している。ORBはそれぞれのカテゴリーに含まれる各機能コンポーネントを連携する通信メカニズムとして重要な位置を占める。
高度造船CIMを実現する各種アプリケーションは、ネットワーク上に分散した機能コンポーネントが提供するサービスをその物理的な存在場所を全く意識することなく、必要なサービスをPlug-and-Play的に組合わせることによって効率的に開発される。