生産管理においても、計画と実績との差異を調整するための工場内各部門の調整が必要であり、実績の後続船設計へのフィードバックが生産性向上を持続的に実現するために極めて重要である。従って、造船業を構成する業務はすべてのステージで関連部署がそれぞれ情報を交換しながら調整を進める典型的なコンカレントエンジニアリングを行っている。
図2.1-1は上記報告書で検討された従来の造船業の業務フローの概念図であり、以上の内容を示す。
造船業を支援するシステムは上記のコンカレントエンジニアリングを支援することが前提であるが、そのためには昨今急速に向上しているネットワーク技術、分散環境支援のためのシステム技術を活用してその基盤となる知識共有を実現することがどうしても必要となる。すなわち、ここで言う知識共有の実現とは、人間がシステムを活用するに際して図2.1-2に示すようなそれぞれの間の情報伝達を実現するために必要な共通基盤を実現することを指す。
これらの情報交換の共通の基盤を個別の事例ごとではなく、汎用性の高い形で実現するための工夫が本開発研究の根幹である。
(1) 人間からコンピューターへ
人間がコンピューターへ入力する情報?の内容が具体的に何を示しているのかをコンピューターが分かるように約束しておくことである。人間の知識の表現をいかにコンピューター内に格納するか、すなわち、コンピューター内での知識表現の仕方が課題となる。本開発研究では造船に関する知識を過去10年にわたって検討してきたプロダクトモデル(PM)及び新たに提案するプロセスモデルとして表現することを目指している。
(2) コンピューターからコンピューターへ
コンピューターどうしがネットワークを介して?の情報交換をする場合、一方の任意のデータが、他方のコンピューター上にどう格納されるかを規定しておくことである。ORBを使ったネットワーク上での諸機能の共有によって、コンピューターどうしの情報交換が自在となることを目指す。