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5.2 荒天時におけるアクチュエータシステムの経済性

荒天中における本船の採用したアクチュエータシステムの経済性はまず、CPPによる波浪中での航行能力の改善効果として期待される。図5-2-1は平成10年2月16日に福山港を出航して、18日に横浜港大黒埠頭沖に投錨するまでの航海記録を示す。図中にはこの間の風向、風速、主機回転数、プロペラ翼角、船速(対地)、船体の縦揺れ、上下加速度、横揺れ、横方向加速度である。

2月17日の18時ごろから風向、波向が急激に変化し、対地船速の低下が始まり、22時頃には8ノットにまで低下していることが判る。CPPの翼角も船速の変化と同様な変化をしている。この船速の低下は風向と波向の変化によると考えられる。このとき本船は御前崎を越えようとしており、追い風、追い波から向い風、向い波に変わり、それにつれて船体運動も変化しているのがわかる。船速とプロペラ翼角はそれに対応して変化している。この記録からCPPの場合、ALCの機能でトルクが一定になるような制御がかかり、船速の低下に伴い、自動的に翼角の調整がなされているのがわかる。FPPの場合にはトルクが増える為に主機の負荷が大きくなり、その結果として回転数が低下することになり、これが大きくなると航行不能になる。このような負荷の大きな変動が主機のメンテナンスに不都合であるのは言うまでもない。

したがって、CPP船は運動の大きさの許容範囲内で主機の立場からは荒天時でも航行を継続できることになる。このようなCPP船の優れた性能が実際にどの程度の就航率、航行速力と燃費の差、また、メンテナンスコストの軽減に結びつくかの検討は今後の問題である。

 

 

 

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