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?有効性の検証

図4-1-17に他船との出会いと危険領域表示の実例を示す。

ここに示す出会い状況は、内航近代化実証船が鳴門海峡に向けて紀伊水道を北西方向に航行中に、南下してくる大型船と横切り関係になったときのものである。

(1)に示すように本船の針路上に危険領域が表示された。(係数は “4” )

(2)相手船の方位はほとんど変化せず、距離3.5マイル程度に接近した。

(3)距離約2マイルとなった時点で、右転による避航を開始した。

(4)避航動作に伴って新たに見合い関係(第3船)が発生した。

(5)第3船を航過した。

このとき避航支援機能は図4-1-17に示す危険領域を表示していたが、船長は目視による動静監視を継続しており、避航意志決定は全て目視から得た情報のみに依っていた。

図4-1-17(6)には(1)の局面における危険領域の表示にその後の航跡を重ね描きした。船長は目視によって避航したが、その結果は避航支援機能が表示した危険領域の外周を辿るものであった。このことから、調整した危険領域の表示は、操船者の感覚とほぼ合致していたものと判断することができ、避航支援機能は避航意志決定に際し有効なものであることが検証できたと言える。

また、避航支援機能を有効に利用した実例を図4-1-18に示す。

ここに示す状況は、潮待ちをしていた同航船とほぼ同時に鳴門海峡を通過しようとしているものである。流速が強く可航幅が強い水域では、他船との距離を十分に確保することが望ましい。そのためには相手船の速力を把握し、どの付近で最接近することになるかを判断しなければならない。避航支援機能は図4-1-18のように同航船との最接近位置(ならびに危険領域)を絶対座標系で表示するので、同航船に対する判断を迅速にとることができる。

この時の運航員は表示された情報から、橋の手前で同航船に追いつくことになり、最狭部付近で並航する可能性が高いことを認識し、プロペラピッチの調整により減速して船間距離の調整を図った。

 

(4) 避航支援機能に対する運航員の所見等

避航支援機能に対する所見の一部は前述したが、図4-1-11(避航支援機能の使用実績)ならびに図4-1-12(ARPA機能の使用実績)にある通り平成9年12月(運航員G-F)からは使用率が増加している。

運航員G:船長によるヒアリングでは、積極的に機能を使用するようにしているとのことであり、表示されている危険領域の意味(自身が避航操船の意志を決定する過程での位置付け・役割)が確立しつつあるとのことであった。

 

以上のことから、危険領域表示の大きさ調整の妥当性がさらに検証できたと言え、ARPAの自動捕捉機能等の課題があるものの、避航支援機能は有効利用が可能であると推察できる。

 

 

 

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