1.4 事業の成果
平成8年度は近代化設備の仕様について検討を行い、これに則した機器等を開発し、船舶へ装備した。実際の船舶の建造過程を通じて近代化設備についての検討・開発・装備を行うことによって、より現実的な研究を行うことができた。また、建造中の近代化設備に係わる指摘事項を調査した。
また、同一造船所において内航近代化実証船と同型船(従来型)の建造が計画されている。この同型船の建造工数についても調査を行うこととしており、今回の内航近代化実証船建造と同船型(従来型)建造のそれぞれの工数を比較することにより、近代化設備に対応した工数低減等に関する検討が行えるものとなる。
さらに、建造された内航近代化実証船に対し性能確認試験を行い、船舶としての性能、近代化設備の作動状況等を確認することができた。近代化設備の一部については基本的な機能の評価を行い、機能要件を満足していることが確認できた。
このように、平成8年度では近代化設備の仕様をとりまとめ、実船を建造し、基本的な機能等を確認することができた。
これに引き続いて平成9年度においては、内航近代化実証船は船主の業務計画に基づき運航されているので、この実運航を通じて近代化設備の運用を実証・評価、更に今後の課題を抽出することを目標にした。
このために、実船の就航実績を計測するために、測定システムを搭載し、長期にわたる就航データを収集するとともに、乗船調査や運航員からの聞き取り調査も実施し、内航船の就航実態を把握するための貴重なデータを蓄積することができた。
また、それらの解析から以下のような成果を得ることができた。
先ず、統合操船システムは操船情報を使い易い形で集約的に提供し、操作も容易にするから、安全性の向上と負担の軽減に資するとともに、運航者の技量への過度の依存を減らすことが期待できることが分かった。しかし、運航者がうまく慣れて使いこなすには再教育、再訓練の機会の提供とかが必要になり、操作の容易化等の今後の改良の課題も分かった。
また、機関室のMO化、モジュール化は建造と運用の両面で多大の効果があり、機器の信頼度の向上、わかりやすくて製作し易い構造と配置、操作の容易さに資するもので、負担の軽減に有益である。将来、標準化、量産化が進展すれば、この成果は一層顕著になる。
採用したアクチュエータとジョイスティック操船システムも操作の容易化や運航の改善に有益であるし、居住区の快適化も運航員に好評であった。
このように、企画、建造した内航近代化設備を搭載した実証船はブリッジ内の操船のワンマン化を現実的なものとし、安全性と経済性の両面で内航輸送の明るい未来に貢献すると期待され、更に効果的なものにするための改良すべき諸点も明らかになり、本事業は所定の成果をあげることができたと結論できる。また、この成果は公開講演会と内航近代化実証船の一般公開を通じて幅広く社会に理解された。
2 内航近代化実証船の概要
2.1 内航近代化実証船の主要目等
図2-1-1に一般配置図、図2-1-2に機関室配置図を示す。また、表2-1-1に主な船体仕様、表2-1-2に機関部機器構成を示す。