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は じ め に

 

内航船の近代化につきましては、若年船員の不足、船員の労働環境の改善等の問題があり、これまで各種の機関において研究及び検討が行われておりました。当財団でも平成4年度から2年間に亘って「内航船の近代化に関する研究」事業を実施し、499トン型貨物船を対象に近代化船に要求される性能、設備、機能等の標準化、装備費用の算定、運航採算性等について検討するとともに、これらの検討結果を踏まえ、実際に1人当直が可能なコックピット型操舵室、船員室の各モックアップを製作し、展示会、講演会等をとおして新しい内航船のイメージアップに努めてまいりました。しかしながら、昨今の景気の低迷等により内航海運業界を取り巻く環境は非常に厳しく、これら研究成果の実際の船舶への採用が進んでいないのが現状でありました。

このため当財団では、これまでの研究成果を十分踏まえ、ワンマンコントロールを考慮した統合操船システム、快適な居住設備、モジュール型機関室等とこれに加えて、離着桟時の操船性能を向上させるアクチュエータシステムの装備などの画期的な設備を内航船に装備し、その後の実際の運航についての追跡調査を通じ、近代化仕様の内航船についての実証及び評価を行う「内航船近代化のための実証試験」事業を平成8年度より開始いたしました。

本事業は、競艇公益資金による日本財団の補助事業として2年間に亘って実施し、平成8年度においては、対象となる船舶の近代化設備に関する仕様の決定、装備及び性能の確認を行い、平成9年度には、実際の運航を通じて近代化設備の有効性の実証・評価を行うとともに、成果の公表、内航近代化実証船の公開を行いました。本報告書は2年間の成果をとりまとめたものであります。

本事業の実施にあたりましては、運輸省のご指導、並びに神戸商船大学 原 潔 教授を委員長とする「内航船近代化の実証試験に関する研究委員会」、広島大学工学部 小瀬 邦治 教授を部会長とする同作業部会の各委員の熱心なご検討、また、実証試験に使用する船舶をご提供いただいた運輸施設整備事業団(旧船舶整備公団)並びにエヌケーケー物流?殿、他関係各位のご協力を頂き、ここに心から感謝の意を表する次第であります。

 

平成10年3月

財団法人シップ・アンド・オーシャン財団

会 長   今  市  憲  作

 

 

 

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