いずれの分散処理剤とも、その使用については流出事故発生後、可能な限り早急に散布を実施することが重要で、時間が経って乳化、高粘度化した油には効果が薄いことが過去の多くの事例からわかっている。
現在まで、特に漁業関係者や環境保護団体等から分散処理剤の毒性に関する指摘が後を絶たないが、最近の研究においては、分散処理剤そのものの毒性よりも、分散処理後の油の毒性が問題視されている。これは主として海域の生態系、特に油分解菌を末端とした食物連鎖に関するもので、カナダ、アメリカにおいてこれらの研究が盛んである。一般的には、実験で分散処理剤の使用が処理油の毒性を著しく増大させなければ、その分散処理剤の使用が承認される。
Exxon Valdez号油流出事故で分散処理剤使用決定の遅延による被害増大の過去を持つアメリカや初期対応における分散剤の効果を認識しているイギリス等では、海域特性の異なる各地域毎に分散処理剤使用に関する事前協議を実施して使用の承認を得ておき、事故発生時には分散処理剤使用の決定が指揮・命令系統の中で速やかになされるような体制が整えられている。