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くのか」という究極的な問題に関係してくるからです。こぼした油は海洋中に留まります。ところが、どの様な状態になって行くのかということは殆ど知られていません。そして、この油は結局、食物連鎖の一部に入って行くように思われます。化学的な分散処理剤を使用するのかしないのかを決定しようとするときは、これらの点をよく考えなくてはなりません:(1)海水中には既に油がある、(2)我々が手を加えようと加えまいと、その続いている自然の過程を加速することになる、(3)我々は、こういった事故の時に何が起こっているのかを慎重に監視、観測していく必要がある。

デイヴィス: 化学的分散処理剤のことについてですが、この化学剤を散布する飛行機を非常に近くで監視したというお話ですが、どのくらい近くまで安全に近づけたのでしょうか。

ルネル: 健康上、安全上の問題として大事なことは、顔にマスクをつけて、呼吸できる程度に微小になっている分散処理剤の微粒子を吸いこまないようにすることでした。あとはただ、純粋にパイロットをどこまで信頼するかということになります。アトランティック航空の場合には実地試験で定期的に協力しました。それは付加的な問題を提起します。分散処理剤の散布を行おうとして、うまく準備ができたら、全てを本当に実行しなければなりません。実際に外へ出て行って油を扱わなければならないのです。この点が、米国において分散処理剤の使用が増加しつつあることに対して抱えている一つの問題であると思います。即ち、実油試験の演習がなければ、航空機をどれだけ接近させられるかという信頼関係を得難いのです。確かに、我々の場合は全然危険を感じませんでした。実験の時も実際の作業の時もいつも船に接近していました。彼等は良くやっています。

デイヴィス: しかし、良い結果を得るためにはどこまで近づく必要があるのでしょうか。

ルネル: 散布された直後に行けるように最小限500m以内にいなければなりません。我々はごく初期のプロセスを観察したかったのでもっと近づいたこともありました。しかし、単に最小限の情報を得れば良いのなら、必ずしも我々がやったように近づく必要はありません。ですから、これは安全な作業と得たい情報とのバランスの問題だと思います。

武藤: 日本に対して何かアドバイスはありませんか。

ルネル: 現在、日本は燃料重油流出の経験によって、対応の多くは従来日本周辺で起こった流出に対して向けられてきました。ご存じのように原油の輸送が非常に増えていますので、起こりにくいかも知れませんが、より大量の流出の危険性がある原油に関しても、対応を考えておく必要性があるのではないでしょうか。もちろん日本には重油の流出には適している機械的回収能力がありますが、例えば機械的回収を補完する対応法として国家的に分散処理剤も用意しておくべきだと考えます。どの程度機械的回収をするか、どの程度分散処理剤を使うかというバランスは、具体的な油の性質や流出時の状況によって違います。特別の措置を設けたり、特に日本近海では原油が大量に輸送されているので、別な選択肢を持つ方が適当ではないかと考えます。外野の傍観者としては、この点どうお考えかご意見を伺いたいと思います。

工藤: 機械的な回収について、回収する限度が5%からl0%であるという話は伺いましたが、機械的回収は、10%以上回収できると考えますし、国民も機械的回収に好意的です。先程、R&Dについては非常に予算が限定されて、あまり開発もできないという話を伺いましたが、ヨーロッパで機械的な回収について共同研究するような動きがあるのでしょうか。英国はどちらかというと分散処理剤で、ノルウェーは機械的な回収を行い、あまり一致して一つの財源を使えないと思うのですが、ヨーロッパでは共同研究の動きがあるのでしょうか。

 

 

 

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