日本財団 図書館


自治体は、自治体内で発生又は損害を生ずる可能性のある重大な汚染であって、民間システムが対象としないものに対する対応準備システムを備えなければならない。1970年代の終わりからノルウェーの海岸線は51の自治体間(二つ以上の自治体)対応準備区域に分割され、それぞれが緊急防災計画及び対応資機材を備えている。70,000m以上のオイルフェンスと約300基の油回収装置が利用可能である。1990年代の終わりには、再編成作業が終了し、対応準備区域は35となる予定である。この対応準備は、陸海双方を対象としている。地区消防署は、あらゆる種類の汚染事故への対処において重要な役割を果たし、港湾部門は通常海上における油の回収の際に重要な役割を果たすことになる。

最後の第三番目の柱は、ノルウェーの汚濁管理局の指導下にある政府の対応準備である。この緊急防災計画は、汚染源が不明又は汚染者自身が対応できない重大な汚染の場合に実行に移される。後者の場合には、汚染者に代わって政府の対応準備が対応することとなるが、汚染者は後日費用の支払いを請求される。事実上、これは沿岸沿いに航行する船舶及び理由が何であれ座礁又は衝突した船舶からの油流出を意味する。対応準備システムは40,000m以上のオイルフェンス及び約100基の油回収装置を保有している。ノルウェー沿岸警備隊の船舶6隻、対応専用船4隻、特殊装備のツインターボ・プロップの監視用航空機フェアチャイルド・マーリン11lB及び動員可能な船舶に関するデータバンクが利用可能である。

"アリサン号"座礁の通報を受けた後、地区当局に対して警報が発せられ、現場に司令所を置くよう要求された。自治体は、特に脆弱な地域を防御するために、近くの補給所からの政府の機材を含め、提供可能な資機材を全て使用するよう指示された。SFTは最初その本部をホルテンに設置したが、初日の日中に必要なスタッフを西海岸に移し、そこに司令所を設けた。必要な政府機材が動員され、第一報から5時間後には回収装置3基が既に稼働していた。回収装置の主な役割は、海上からできるだけ多くの油をすくい上げ、影響を受けやすい地域に油が到達するのを防ぐことであった。この戦略は、地域、風や潮流の状態などの使用可能なデータ及び利用可能な機材に基づいて決定された。気象条件からルンドの重要な島を防御することは不可能であった。そのため、同様に重要な他の二つのフィヨルドを優先すべきであると決断された。

 

油流出への対応における国家戦略

機械的方法による油の回収がノルウェーの対応準備の基本原則である。化学的な方法は補助的なものと考えられている。対応作業はできるだけ汚染源に近いところで行わなければならない。あらゆる流出油処理作業の主な目標は、環境に対する悪影響を抑止することなので、生物学的調査がノルウェーの対応準備の戦略決定の鍵を握ることとなる。

国の油濁対応準備は、居合わせた船舶や環境関係業務の専従ではない人達に大きく依存している。沿岸警備隊の船舶、タグボート、フェリー、漁船、補給船、沿岸航路のタンカー等が国の緊急防災計画の主要資機材なのである。

ノルウェーの海岸線は、生物学的影響を受けやすい所について地図上に示されている。したがって、流出油が海岸線に接近し、これに対する要員機材が全面的な防除活動には不十分な場合、種々の海岸地区の優先権をすぐに決定することができる。

一つの精油所が、一定の条件を満たせば油の化学的分散処理を実行しても良いという、SFTの事前承認を取得している。その結果、化学的対応を直ちに実施できることとなり、これは、効果的な化学的防除の一つの要因となる。SFTは環境上の緊急浄化作業における化学製品使用について特別の規定を設けている。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION