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討論

 

ネールラン: 政府が化学剤を承認しなかった理由は何でしょうか。

レッサード: いくつかの理由があります。第一の理由は、化学剤を開発するのに数カ月かかり、89年に使うのには完成するのが遅かったからです。冬中作業し、90年には使うことを検討してもらいたいということで作業を進めました。ちょっとしたことが起こりました。50万ドルほど使ってデモンストレーションを行いました。この化学剤を使ったテストのいくつかで鉱物微粉がでました。これは氷河の沈泥と同じもので、それが岩石からも出て来たのですが、機関はこれを分散した油だと誤解しました。冬の間、たくさんの費用を投じて、これは確かに氷河の沈泥であるということを実証しましたが、彼等は望むとおりの油の分離機能がないということで反対し続けたのです。

危機一髪のところで、チンガリー二提督が90年3月に最終決定をしましたが、それには国の上層部からかなりの圧力があったのではないかと思います。彼等は我々が油の一部を水中に戻しているのではないかと心配していたのです。結局承認を得られませんでした。第二の理由は、1990年の夏までに、冬の嵐が非常に効果的に機能して、事実上浄化の次の段階に入り、殆どの海岸線から嵩のある油が除去されたことで、それほど浄化剤を使う緊急性がなくなったことです。浄化剤が優れている理由は、これまでのように華氏140度ぐらいまでも上げなくて良いということです。使用温度は100度で済みました。これは摂氏だと60度対40度になります。浄化剤を使えば低温の水でも効果があるわけです。化学剤を使わなければもっと高温の水を使わなければならなかったでしょう。上記のようないろいろな点を考慮して使わないという決定がなされたのです。

元良: 分散処理剤の使用について事前の許可を取る制度があって、それも米国沿岸の殆どのところが許可が取れているということは、非常に我々にとっては驚きで、大変示唆に富んだ話だと思います。ただ、地域の経済、漁業、生態系の保護というような問題、いろいろ利害がぶつかるような所で簡単にその様な結論が出せるのでしょうか。どの様な手続きで決められるのでしょうか。

レッサード: これは関係者全てを召集します。つまり、状況にかかわりうる人達を全て集めて、選択肢を秤にかけるということです。何をしようと必ず環境に影響が及ぶことは覚悟しておかなければなりません。油の流出があった場合には何かが影響を受けます。分散処理剤というのは一つの選択肢であり、油を除去できなかったときに海岸線に油が漂着するのを防ぐ代替方法なのです。分散処理剤が深海で魚への影響が殆どなく安全に使うことができるという実証が十分行われています。魚は、今朝も申しましたように油があるということを迅速に察知してこういう場所は避けると思われます。

関係者全てを集めて、米国では事前承認を地域ごとに行います。シンポジウムを開き、いろいろな専門家を集めて話し合い、いろいろな要因を秤にかけ、その後でこの問題についてあらゆる関係者の間で討議を行って、最も高い優先順位は何かということを判定しました。もし漁業が最優先であるなら、一つの方法に決定します。もし潮間帯の養殖場が最優先であるということであれば別の方法を決めます。誰もが別々の優先順位の組合せを持とうとします。それをどの様にして秤にかけ、地域の自分達にとって何が最適と感じるかという判断を下すのです。米国ではそれらの過程を地域ごとに行い、これは非常にうまくいきました。

殆どの州で分散処理剤は重要な手段だと認められました。もちろん常にこの方法が使われると

 

 

 

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