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最終的に処理施設へ搬入された油水回収量は、合計で約47,000kLである。

ハ. 回収油一時貯留ピットの作成

海上漂流油及び海岸漂着油が膨大となり、それに伴って回収油も増加することが予測されたため、従来から回収油の一時貯留として使用しているドラム缶では十分対応できないと判断されたため、回収油水量の多い福井、敦賀、珠洲地区に一時貯留ピットを仮設した。

 

5. 教訓

(1) 日本海側海域の防除能力

冬期日本海は、強風が連吹し海上工事は実質上不可能な状況にある。そのため、海上作業に従事する作業船はその殆とが太平洋側に移動し、瀬戸内海等の海上作業に従事しており日本海側では緊急時に用船できる作業船は限定される。

また、日本海側は太平洋側に比し、船舶の出入する港も少なく、さらに荒天の中を航行する船舶やタンカーの隻数も少ない。

このように、太平洋側と対照的な日本海においては特に冬期は油汚染事故に対応する作業船が不足しており、海上での防除能力も低下する。

(2) 外洋域における回収資機材

国内の回収資機材の配備は、タンカーの入港する港、東京湾、伊勢湾、大阪湾、瀬戸内海等の船舶の輻輳する海域及び石油コンビナート地区の主として港湾を中心とした閉鎖された比較的平穏な海域であるため、配備される資機材も平穏な気象・海象を想定したものとなっている。従って今回の事故に出動した油回収船を除いては殆とが港内を対象としたものであり、気象・海象条件の厳しい外洋に対応できる体制になっていない。

(3) 民間防除組織

国、地方自治体の責務として実施する各機関、また官民組織として、法律に基づいて組織される排出油防除協議会のほか民間組織としては、石油事業所で構成される石油連盟傘下の海水油濁処理協力機構、海上災害防止センターを中核とし、センターの実働勢力となる各港湾のタグ業者、港運業者等の契約防除措置実施者組織がある。民間勢力の通常活動範囲は、港湾を主体としており、サルベージ業者を除き外洋での対応能力を有していない。従って今後の外洋事故の対応に当たっては、サルベージ業者を中心とした民間防除組織の再構築(ハード・ソフト両面の強化)を図る必要がある。

(4) 船主との契約による防除作業の限界

海上災害防止センターが実施する船主からの委託に基づく防除作業は、契約により船主及びP&I保険の委任を受けたサーベイヤーの指示を受け、または了解のもとで実施するため、広範囲に漂流・漂着し各所に作業現場が拡大した場合にその都度サーベイヤーの了解を取り付けるのは時間的な遅れを生じ、またその必要性について判断の相違が生じることにもなり、スムーズな作業が阻害される結果となる。

現場作業においては、各機関の連携のもとで統一的な指揮・運用を図る必要がある。

(5) 回収油の処分

回収した油性廃棄物は、約47,000kLに上り、これらの廃棄物は、国内法制度のもとで産業廃棄物として処理施設においてすべて処分されたが、通常時の産業廃棄物の処理手続きに基づいて実施されたため、回収された油性廃棄物の処分がスムーズに実施されなかった。

 

 

 

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