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で陸揚げして鉄道で運ぶと200キロしか運べないコストに相当します。海上輸送は、そのくらいコストが安いわけです。

第1のノウハウは、この海上輸送をフルに使うということです。

第2のノウハウは、同時に、コストの高い陸上輸送を極力ゼロに近づけていくということをやりました。この2つを徹底的にやったわけです。鉄を1トンつくるのにフランスのダンケルクにあるユジノール製鉄所は、鉄鉱石から板になるまでの間で、各製鉄所の中でいろいろな工場を動き、そのための構内鉄道が5万メートルも工場の中にあります。私は、当時運輸省で計画を立てていましたが、そのときに建てた日本の製鉄所は、この構内鉄道の長さを500メートルにまで短縮しました。その結果、生産コストが大変安くなり、海外で競争ができるようになりました。

現在でもそうですが、日本とアメリカの間で貿易摩擦が1970年ころから起きてきました。最初の貿易摩擦は、カリフォルニアで日本の鉄の価格が安過ぎる、ダンピングしているということでした。ロサンゼルスにおける鉄鋼の価格は、確かに日本の鉄のほうが安いです。アメリカでは、鉄は全部国内で生産・消費されます。鉄が販売される最終的な小売りのコストは、生産に要するコスト、輸送に要するコスト、すべてが加算された形で最終コストが決まります。太平洋を横断してロサンゼルスに陸揚げされた日本の鉄と、ピッツバーグから鉄道で3,000キロ運ばれてきた鉄とでは、最終価格にかかる輸送コストが何百分の1です。私は、カリフォルニアに行ってそれを調べてきて、日本政府は、日本の鉄はダンピングをしていないとアメリカ政府に回答しました。

第2の問題は、こうして工業が資源のない国に定着できるノウハウを獲得しましたが、それでは、その工業をどこに配置していくかということが、国内的には大変に重要な課題になりました。それまでの日本は、工業が発達した地域は、生活水準が高く所得が高く、工業が導入できなかった地域は貧しくて苦しんでいました。工業を開発するためには、どのような交通開発が適切であるかということが、この運輸政策の基本になったわけです。工業開発は国民生活を豊かにするためでもありますから、工業開発も運輸政策の実施も、そうした意味では、国民生活を豊かにするための手段であるわけです。そのために38万平方キロの日本列島のマスタープラン、具体的な国土づくりを描かなければなりません。運輸政策の主体をなす交通インフラの整備は、その中で位置づけられなければなりません。先ほど次官のごあいさつにありました調和と効率と倹約というのは、運輸政策がその国土政策の中にうまく位置づけられることによって、この3つの目的を達成できると考えたわけです。

そこで、表-2に示しましたが、日本政府の政策の体系がこうした考え方の中で位置づけられました。 1つは、国民経済の基本計画をつくっていますが、もう一つは、日本列島の国土をどのようにデザインするかという計画、A、Bです。このAとBと

 

 

 

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