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それらのプロジェクトを見ていく際、それぞれの地域性や特殊な国情を頭に置いておくことが必要であろう。すべてのプロジェクトに共通する特定の側面を重んずるという、ごく当然の動きが見られる。それらは、技術的あるいは状況的特徴というより、人間性に近い側面である。自然のモチベーション、新時代の価値観、環境問題、生態系、そして宗教や他の全体論的な信条に至るまで、捜し求める価値があるであろう。

函館は非常に興味深い例で、人口30万人の街に年間600万人もの観光客が訪れるということを見れば、その成功は明らかである。その成功のもとは何か、より深い社会心理学的評価をする価値がある。

ブラジル、特にリオデジャネイロに関しては、自然美と魅力的な人々だけでなく、それ以上をめざすことが重要と思われる。神秘的個性、音楽性豊かな雰囲気、自然のものとの独特の親近感、そして何よりも種まくべき肥沃な土をもたらす海。西暦2000年代世代への門、まだ発見されていない全自然界への扉の地と、みなされるべきであろう。

 

リオデジャネイロの貢献

1960年代初頭に行なわれた新設都市ブラジリアへの首都移転以来――そして、難局にあるブラジルという国の縮図であるということで必然的イメージダウンもあり――数年前まで長い間、リオデジャネイロのイメージは冴えなかった。しかし、そんな時代は終わり、リオは今、かつての生きる喜びを取り戻しつつある。

いかにも、リオはブラジルの縮図なのである。港湾システムの状況についての議論でも、リオはブラジルの新しい顔であり、現在進められている大規模で徹底した変革のおかげで、1998年を通して徐々にイメージアップしていくことであろう。

これこそが、世界と融合するブラジルである。セペティバ港、近代的なリオ港コンテナターミナル、都市再開発プロジェクト、リオ港プログラム。これらのプロジェクトは今後、ブラジル全土で同じように行なわれ、新たなる計画機会を創り出し、国際貿易を振興し、各港湾・各都市間の関係を強化することであろう。

それは間違いない。リオで再開された開発サイクルを、長年にわたり経済を蝕み続けたインフレのせいですっかり落ちたブラジルの国際的評価を再び高めるべくデザインされた、戦略の一部として見ていただきたい。

マウア埠頭プロジェクトが、港湾地区に同じ都市の情熱を吹き込む最初のプロジェクトになることは明らかである。他のプロジェクトもすぐあとに続き、リオ市が現在進めている遊歩道のある文化施設群建設やガンボア埠頭旧港地区の再開発によって、豊かになりつつあるダウンタウンの中心地区の価値をさらに高めるであろう。

リオポートオーソリティは、文字どおりリオ市の再活性化を助け、市の仕事の価値をさらに高め、州政府の地方開発推進という使命を後押しし、新しい政策、戦略、外交、商業、レジャーの可能性を開こうとしている。

日伯それぞれの特徴が自然に補完しあうものであることから、ブラジルと日本の港湾およびウォーターフロントプロジェクトが、通常の行動枠を越えてより綿密な関係を築くことができるよう、適正なメカニズムをつくることが有益であろう。

そのような両者の協動関係は、ブラジル全土の他の事業、そして港湾の近代化を通して世界に開かれた経済を築くサイクルの途上にある各国の事業にとっても、必ずや刺激になることであろう。

それはまるで、リオ港と東京港を象徴するかもめがひとつの群れになって、人類の大いなる旅立ちに向けて、他の鳥を群れにいざなっているかの如くである。

 

(*)筆者、アイルトン・シャビエルは、リオポートオーソリティ(コンパニア・ドッカス・ド・リオデジャネイロ)でエンジニアリングと開発の責任者をつとめるシニアオフィサーである。彼は、1997年11月に東京の財団法人港湾空間高度化センター(WAVE)が主催した、日本の当局とアメリカ、イギリスから招聘されたスペシャリストとの共同研究に参加した。

 

 

 

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