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ブラジルと日本の港湾・ウォーターフロント整備プログラムが延長線上にあることは、その目的がひとつということだけ見ても十分主張できる。しかし、成功の論拠はそれぞれでまったく異なる。

その相違については、以下の点を分析・比較しながらじっくり考えてみる価値がある。

・それらのプロジェクトによって達成される優先事項の質

・それらのプロジェクトを支える制度的・経済的基盤

・各ケースの成功のための重要要因

・ウォーターフロントプロジェクトを行なっていく動機

それらのプロジェクトが、その経済浮揚効果によって、地域社会、市民生活、さらには広い範囲の地方全体に大きなインパクトを与えるということは、周知の事実である。したがって、そういったプロジェクトには、州政府やポートオーソリティ代表者の直接・間接の介入が必要になる。ただ、地元の利益を超越することが多いからといって、地方の発展、国の発展という名のもとに地元地域社会の戦略的目的をなおざりにしないようにすることが、大変重要である。

一方で、それらはきわめて多様化したプロジェクトである。多様化の背景には特に、商業的・経済的実行可能性を確かなものにするため、それぞれが独自の市場を見出していかなければならないということがある。歴史的建造物の保存がまず肝要な場合もあるであろうし、他にこれといった産業のない地元社会に娯楽産業のチャンスを提供することが重要という場合もあるであろう。あるいは、その地方に魅かれて訪れる団体客をもてなすのに適切な設備を観光セクターに備えることが必要なこともあろう。

リオデジャネイロについていえることだが、それらプロジェクトが商業主義的になりがちというのは永遠の傾向であろう。というのは、ウォーターフロントプロジェクトこそ、ポートオーソリティの財政均衡のため、つまり旧会社が残した負債をゼロにするという使命を達成するための手段と考えられているからである。

適切な事業を選ぶというのは、生易しいことではない。一般的原則として、市場評価とサービスに対する需要が決め手になるはずである。しかし、市のプランとポートオーソリティのプラン、そして民間投資家の利益が食い違うというのは、珍しいことではない。

多くの場合、いずれかの投資力あるいは財力の関係でターニングポイントが見つかって、決定権が民間投資家か政府当局のいずれかに与えられることになる。ブラジルの場合、プロジェクトの意思決定は公開入札に委ねられている。したがって、通常落札者が決まってしばらくして降りるプロジェクトの正式承認に関して、市当局が干渉した場合には、当然何らかの議論が巻き起こる。

これらのプロジェクトの都市計画における重要性をあらかじめ評価するのに必要なダイナミズムを持った基本計画(マスタープラン)がないことと、対立する利害を調整する難しさとが、プロジェクトの進捗を妨げている。各セクターの代表者でマルチタスクチームあるいはワークグループを結成するのが、利害の対立を和らげるための常道としてよいとされるのは、このためである。

今述べた状況に関して、日伯両国の相違点を理解するには、以下の表をご覧いただくとよいであろう。

 

 

 

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