ブラジルと日本の港湾とウォーターフロント(概要)
アイルトン・シャビエル
近年多くの国では、国際化時代の常として、港湾に関する議論が俄然注目を浴びている。
この報告書は、1997年11月に日本の主要ウォニターフロント・港湾プロジェクトを視察した際に書き留め、解釈したものをもとにした考察である。当時、香港や日本、「アジアン・タイガー」諸国といった強力な経済国を含め東南アジア諸国では、国際貿易の混乱による大きな不安が渦巻いていた。
訪問した日本のプロジェクトを、リオデジャネイロで進行中のプロジェクトと比較した。ブラジルは今、文字どおり建設中で、来世紀にその広大な国土と豊かな天然資源にふさわしい国になるための条件は何かを模索しつつ、変貌を遂げようとしている。リオデジャネイロは、そのブラジルの文化的モデルと考えられている都市である。
ぜひこれからの参考にしたい、あるいは励みにしたい成果がいくつか得られた。それら興味深い結論は、新しい政策の構築を助け道筋となるものである。
以下は、「新しい完全民主主義政権のもと、大きく変貌を遂げつつあるブラジルの港湾システム」と、「訪日して触れた、最高の『将軍スタイル』で企画・実行されている日本のモデルの数々」とを比較した結果得られた、技術的・経済的理解である。
公有港湾に対する投資がままならないブラジルの現状を見れば、国際貿易が振るわないこと(日本のマーケット参加が7.2%であるのに対し、ブラジルは0.8%)、工業の競争力が弱いこと、国際貿易のコンテナ取扱量が少ないこと(年間180万TEUほど)も、幾分説明がつく。ブラジル全国のコンテナ取扱量の合計ですら、日本の港湾、たとえば東京、大阪、神戸、横浜といった港湾のどれひとつとくらべても少ないのである。
日本の経済生活は、港湾にかなり影響されている。海岸線が長い(ブラジルの4倍)ということで、その影響力は必然的に大きくなる。日本の国内総生産は46億USドル、ひとりあたりにすると3万6700USドルである。
一方ブラジルでは、その経済成長は、約8000キロメートルの海岸線上にある港湾の活動を活発化して、いかに国際貿易を拡大するかにかかっている。海岸線は、国土1000平方キロメートルあたり0.9キロメートルの割合である(日本の90分の1:80km/km2)。ブラジルの国内総生産は7億5000万USドル、ひとりあたり4500USドルである。日本の国内総生産に近づくためには、経済規模を8倍に拡大しなければならない。港湾活動を活発化することで海岸地域の潜在能力を引き出し、国際貿易を増やしていく必要がある。
リオデジャネイロ港では、ターミナルの民営化(民間会社にリースすることをいう)によって、コストを以前の60%にまで削減することに成功した。リオでのコンテナ取扱いコストは、1998年にはユニットあたり120USドルほどになるであろう。世界で最もコストの安い港湾の仲間入りをするわけである。現在年間20万TEUしかないコンテナ取扱い量も、数年で年間80万TEUになるであろう。
マウア埠頭プロジェクトは、面積8万平方キロメートル。街の真ん中に、文化と娯楽、レジャーのための巨大複合施設が出現する。大規模な干渉である。
このプロジェクトはリオの建築的マイルストーンにしていくために、強烈な視覚的インパクトを創出することを提案している。
都市的・建築的視点から、街の中心と街そのものに対して、娯楽やレジャーのための文化的大建築群を挿入するという形の大規模な干渉が行われる。
第一段階ではプロジェクトは、1600席の劇場、ショッピングセンター、映画館、ジオード(180度の映画スクリーンのあるドーム)、「ハプニング・プラザ」、駐車場、マリーナを備えたコンベンションセンターを想定している。投資額は8000万USドルにものぼる。
これこそが、世界と融合するブラジルである。セペティバ港、近代的なリオ港コンテナターミナル、都市再開発プロジェクト、リオ港プログラム。これらのプロジェクトは今後、各港湾・各都市間の関係を強化することであろう。