の増加は脳組織に酸素供給を増加させ、ノルエピネフリンのレベルを維持する8)ために必要な反射と考えられる。一般に、脳血管に作用するのは炭酸ガスレベルであり直接、酸素ガスレベルの低下が脳血管を拡張させるのかどうかは不明であり、今後の研究課題と考えられる。
航空身体検査における本研究の意義
急性高山病は急性に2500m以上の高山に登った時にみられ、平均12時間以内に発生する。主な症状は頭痛、不眠症、食欲不振、吐き気、弦暈、呼吸困難、尿量減少で原因は肺と脳の浮腫である。重症例では意識障害、運動失調症、乳頭浮腫、膀胱障害、腱反射異常などを認め適切な治療をしなければ死亡することもある。旅客機では機内圧を6000フイート(2000m)以下にするため高山病を引き起こすことはまれである。しかし、2000m程度で発生した例もあり、また呼吸循環器疾患を有する乗客で長距離飛行の場合、あるいは加圧系統に異常が生じた場合など旅客航空機内でも発生する可能性は十分にある。一方、航空機乗員は乗務中さまざまな形で精神的ストレスや運動負荷が加わるため、実際には乗客より低酸素状態に陥りやすいっ高度6000フィートで軽い下肢の運動を行なうと動脈血酸素分圧は10mmHg程度低下する2)。これは高度8000フィートでの動脈血酸素分圧に相当するものであるが、さらに、負荷が増強した場合には今回我々が検討した高度10000フィートと同等の低酸素を引き起こすことも予想される。しかも、低酸素による脳血管拡張作用は低酸素を改善しても、しばらく持続するものである。
旅客航空機の機内は低圧低酸素状態であり、その影響は乗客だけでなく乗員にも及ぶ。乗務中あるいは後に高山病類似の症状を訴える場合、低酸素による影響が大であり適切な指導が必要であり、航空機乗員の航空身体検査基準の見直し時の参考となる