声子音に比べ受聴の明瞭度が低くなる傾向が見られた。このような異聴の傾向については個人差が大きく、個人の英語経験の違いだけでなく、日本語と英語の音素の違いや、音声構造の違いによる、聞き分けの難しさが語音弁別能に大きく影響したと考えられた。操縦室内のようにS/N比の低い騒音環境下では、日本人の英語の語音聴取における語音弁別能はより低下し、その異聴の傾向はさらに顕著になるものと考えられた。引き続き、操縦室内を想定した騒音環境下における英語の語音聴力検査を行っており、騒音負荷時における日本人の英語音声聴取特性について、さらに定量的な評価を行い検討を進めていきたい。
本研究は、現在進行中である操縦室内を想定した騒音負荷時の英語の語音聴取特性に関する研究における基礎的データとして、個々の乗務員の情報伝達や英語の語音聴取特性の実体を把握するのに有用であると考えられた。
1. はじめに
近年の国際化に伴い、国際学会や各種の職場では、公用語として英語が使用される機会が多くなってきた。一方で英語の語音を聴取する場合、正常聴力者においても環境騒音の影響を大きく受け、同じ条件下でも日本語語音に比べて英語語音における聞き取りにくさを経験することがしばしばある。
正常聴力の日本人においては、日本語音節を聴取する場合、SIN比の低下によって語音明瞭度が低下することが明らかにされている(吉田 他、1992)。英語語音を用いた場合の明瞭度については、アメリカにおいて以前より研究が行われているが、日本人の英語語音の聴取については、英語教育や言語学の分野での研究は行われているものの、聴覚医学的な立場からの解析はいまだ充分には行われていない。
航空機の安全運行には、乗員相互あるいは地上との円滑で正確な情報伝達が必須である。現在の航空機の操縦室内は、機外からの騒音に対する