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5.5 法制度上の課題

 

評価試験を行う際の法制度上の課題について以下に列挙する。

 

(1)機体へ搭載するための手続き

機体を改修して試験を実施する場合には、表5-13に示すように機体の修理改造検査を受ける方法と航空法第11条の但し書きを申請して試験機材として一時的に搭載する方法の2通りがある。

 

(a)機体の修理改造検査を受ける場合

この場合、その機材を機体に搭載した場合に耐空性その他に影響がないことを証明する必要があり、機体に搭載する度に多くの資料を作成して検査を受けることになる。そのため、一時的な試験に使用するだけで試験が終了したときに元に戻すとしても、修理改造検査を受けるとなると機体に手を加える度に相当な費用がかかることになる。

ただし、修理改造検査を受けた場合には正式に耐空性が証明されたこととなり、空域の制限、パイロットや搭乗者への制限等を全く受けることなく試験を行うことができるというメリットがある。

 

(b)航空法の第11条の但書を申請して試験機材として一時的に搭載する場合

この場合には、実際に機体に搭載して飛行試験を実施するうえで安全性のみを確認するだけで良く、機体に搭載するための時間と費用を大幅に削減することができる。

ただし、この航空法の第11条の但し書きは1時的に正規の耐空証明の効力を無くしてテンポラリな運用を行う方法であり、あくまでも暫定的な処置である。このため、試験用の機材を搭載している間は飛行することのできる空域が制限されるとともに、パイロット、搭乗者も事前に申請している人に制限されることになる。また、耐空証明の効力のない状態では運航者による有償のフライトが全くできなくなるという問題がある。

 

以上の条件から考えるとある程度試験期間を限定すれば、試験期間中機体を専有することができる機体メーカーによる試験は、航空法の第11条の但書を申請してテンポラリな試験のための搭載とすることが時間的にもコスト的にも望ましいことになる。

運航者による評価試験では運航者との調整が必要になるが、評価試験の期間中に運航者の本来の運航が出来なくなることが予想される。その場合には、修理改造検査を受ける必要が出てくるが修理改造検査を受けようとすれば機体の改修期間も余分に必要となり別の問題が発生することになる。従って、運航者による評価試験については運航者と調整を行い搭載方法を決定する事になる。

 

(2)電波法上の手続き

ACARSによるVHFデータリンクを利用しようとすれば、電波法上の無線局の免許を受けなければならない。無線局の免許は、機体に対して受けることになるので機体メーカの機体で試験を行う場合には機体メーカが、また、運航者の機体で試験を行う場合には運航者が無線免許を受けなければならない。実験局の種類としては、限られた期間試験評価を行うのみであるため、実験局が適切である。

また、実際にACARSを利用してデータ通信を行うための無線従事者の資格は、もともと航空機が地上との音声通信を行うために搭載しているVHF無線機と同じ資格であるが、機器を操作する者はその資格を有している必要がある。

 

(3)航空機製造事業法上の手続き

航空機に搭載しているマップディスプレイ装置は、航空機製造事業法上の特定機器にあたるので出荷にあたっては、全数航空工場検査員が検査を行い通産大臣が発効する特定機器の製造証明書を添付しなければならないことになっている。

今回の評価試験は、一時的な試験のための改修であるため航空機製造事業法第11条、第13条の但し書きが適用され航空機製造事業法の適用から除外されることになる。

従って、評価試験のためにマップディスプレイ装置を改造するにあたっては、試験が終わり次第もとに戻すのであれば、航空機製造事業法上は何も制限を受けないことになる。

 

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