3.2 研究開発事例
3.2.1 ノルウェーにおけるM-ADSトライアル
(1)トライアルの目的
1990年に北海ノルウェー海域におけるオイルリグとの間のヘリコプタ運航の安全性を分析した結果、以下の問題点が指摘された。
・沖合支援ヘリコプタのレーダー監視にはカバレージ限界があること。
・パイロットはレーダーカバレージ外となる海上(飛行時間の約50%を占める)において15分に1度VHF音声による位置通報を義務づけられているが、VHF音声も十分なカバレージを有していないこと。
・航法支援設備が十分ではないこと。
NCAA(Norwegian Civil Aviation Administration)はこれらの問題を解消するために、1996年からM-ADS(Modified-Automatic Dependent Surveillance)システムを導入し、北海ノルウェー海城における運航監視のトライアルを開始した。最終的には1999年1月までに北海上空にADSコリドー(ADS航空機専用航空路)を設定することを目標としている。
(2)使用機体
Sikorsky S-61N、Eurocopter AS-332L-1の2種類
(3)参加団体
・NCAA(地上施設を提供)
・Helicopter Service(ヘリコプタを提供)
・Kongsberg Aerospace
・ノルウェー沖区域の石油会社(7社)
(4)システム構成図
図3-2にM-ADSシステムの構成図を示す。M-ADSは、ICAOのATNパネルにおいて1996年に決定したSARPsであるCNS/ATM-1パッケージに準拠している。
CNS/ARM-1にパッケ―ジで規定されている空対地アプリケーションはADS、CPDLC、FIS、CMの4つだが、M-ADSが現在実現しているアプリケーションはADSのみである。
(5)M-ADS運用の流れ
(a)ログオン
機上搭載装置はインマルサットのAero-L衛星通信システムに自動ログオン、ATCセンターに自動接続する。
(b)Position Reportのリクエスト
ATCセンターはヘリコプタに対しPosition Reportをリクエストする。