3.1.3 3Tモードの運用シナリオ
前述のように、VDLモード3には多数の形態があり、音声とデータを伝送することが可能であるが、これらが実際の航空機の運航にどのように使用され、利点があるか次に検討する。財団法人日本航空機操縦協会発行のAirman's Information Manual JAPANの記述から出発空港から到着空港までの運航シナリオを仮定し、VDLの使用方法を推定する。この目的で、3Tモードの自動ハンドオフ機能を利用したシナリオの一例を図3.1.3に示す。
この図はある出発空港から到着空港まで、東京管制部の監視と指示のもとジェット航空機を運航した場合の標準的な交信を想定したものである。
図中の実線は、音声の交信を点線はデータの伝送を表している。地上は管制官とそのワークステーション、ATNに代表されるネットワークから構成されていると単純化する。
また、機上はパイロットとその入出力装置であるCDU(Central Display Unit)、FMS(Flight Management System)及びFMSの表示器の一つであるND(Navigation Display)から構成される。この機上の操作、表示等を考える。
図の機上と地上の間には3.1項(1)に分類されたアプリケーションの種類を表示した。
(1)出発段階
先ず最初にパイロットは、予め決められた管制承認伝達席の周波数に同調する必要がある。これは従来通り人為的にCDUの入力で行われる。この際、タイムスロットの番号も合わせる為、118.001というチャネルに同調する。このチャネルは118.000MHzの高周波信号で、タイムスロットAを使用するチャネルである。
同調後、音声により管制承認伝達席(デリバリー)に承認を要求するとともに、網加入のため自機のICAO航空機アドレスを入力する。これにより網に加入可能となる。これは3.1項で述べたDLIC(Data Link Initiation Capability)機能による。
この要求に対し、管制官からATCクリアランス内容とレーダー画面上の識別符号であるSQUAKを機上へ送る。機上ではこのデータにより機上コンピュータのデータをセットする。また、管制内容〈3〉はCDUに表示され誤認を回避する。
ジェット機の場合ATCクリアランスを受領後5分以内にエンジンをスタ