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荒天時に於ける小型船の操船

海事補佐人 横山信夫

 

(?) はじめに……。

一概に小型船と言っても航行区域100浬以上の排水量型外洋小型船も有れば2浬以内に航行が制限されている水上オートバイも有る。

ヨットについて言えば緯度が60°N以北,60°S以南でも航海できる外洋クルーザーヨットも有れば5T未満の機付ヨットも有ると言った具合で船型,航行区域の巾が広く小型船全体に就いてあてはまる荒天操法等と言ったマニアルは無い。

要は運航者の技倆や船体の性能が環境(気象,海象)とのバランスをくずしたときに海難が発生する訳であるから30フィート5屯前後以下のプレジャーボートは風力4〜5を限界と考え,すみやかに運航を断念すべきであって,マリーナでは契約定係船の船型,所在地の地域特性等を加味して出艇停止を勧告している所も多い様であるから,それ等の基準をよくわきまえて環境に対する正しい判断を持ち,先ず荒天に会わない様に船をもって行くのが荒天運用の第一の基本である。

さて,小型船に最も危険を与えるものとして風浪がある。

風浪は,週期30秒以下の波頭の尖った波形をしているが,特に小型船は波長と波高のバランスがくずれた異常波に注意しなければならない。

異常波には三角波,磯波(surf),捲波(Roller Breaker),引波,汐波等があるが,いずれもこれらの波は海岸付近,河口,リーフ等で発生しやすく,この付近で転覆してしまう小型船は全転覆海難事故の40%を占めている。

荒天下で最も船にダメージを与えるのは,波高の高い波である。

波高は普通有義波高で表示されるが,強風波浪注意報発令下の波高はその場所で予想される有義波の最大値で報道されている。

1/10最大波高は有義波高の約1.3倍であるがその中の1波は1.6倍になる。

 

 

 

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