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『プレジャーボートの航海計画』

海事補佐人 横山信夫

 

航海計画とは,一口で言えば航行中に起るかも知れない様々の危険や海上の変化を予測して,自分の船を安全に無駄なく目的港に到着させる為の,机上プランの事である。計画を建てるに当って,ブレジャ一ボート(以下P・Bと略記)は先づ第一に「無理」をしない事「自分に都合の好い」情報だけに頼ってプランを作らない事が肝要である。計画を建てる為には資料が必要で「航海関連資料」と「環境関連資料」の中からその航海に必要な情報を収集しよく調査研究して有効に活用しなければならない。陸上の一般旅行者が時刻表を片手に「アレコレ」とプランを練る様にP・Bのキャプテンやスキツパーにとっても,この段階が一番楽しいのではなかろうか…。航海関連の資料としては,公刊されている水路図誌を利用する。図誌には夫々の目的や,特長があるので次にその概略を説明しておこう。

?海図

航海に普通使う海図はメルカトール図法によって書かれているから(漸長海図)航程や速力を計るときは必ず自分の船位付近真横の緯度尺を使う。海図には,全般計画用の総図(1/300万)の外,主として測位用に使う海岸図(1/20万),入出港等に利用する港泊図(1/5万)等がある。狭いP・Bの中で便利な様に,ヨット,モーターボート用に防水加工した参考図(1/12.5万)もある。海図は安全な航海をする為に水深,危険物・底質・海岸地形・灯台や浮標・立標等の航路標識コンパスローズ等が書かれているので航海計画の最も重要な資料と言える。

水路誌

その地方特有な風系や潮流・航路・沿岸の地形・港湾の施設等が書いてある海のガイドブックである。主に一般業務船を対象に書かれているが,P・B向きにも地形・目標・定置網・障害物・入港針路法等が記載されている小型船用簡易港湾案内が本州南岸を始め十二冊,水域別に水路協会で発行されている。その他,之等を補完するものとして「海上交通情報図」の他,小型船の推薦航路に関する資料は,中々見当らないが日本近海航路誌や「日本近海に於ける標準的航路の選定」を参考にすると良い。

潮汐表第一巻

日本付近の港の潮時(高潮・低潮)や潮高,海峡・水道等の潮流の転流時間流速等が記入されている。計画の中で入出港地の潮時を算出したり,行動予定海面にある海峡等の転流時等について知っておく事は,入出港地の潮の流れや航路の潮流を予測したりする上で重要な作業の一つである。

 

 

 

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