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?A障害の程度・種別を問わないこと

?Bバックアップ施設をもたないこと

私たちは、横浜市で重い障害をもった人々と共に「集団生活ではなく、個々の生活を支える」という視点で運営委員会方式のグループホームの運営を13年間実践してきました。重い障害をもった人々の個々の生活を支えることを可能にしたのは、むしろバックアップ施設をもたず、地域の社会資源を可能な限り利用し、障害者自身やその家族が運営に加わってきた結果だと考えています。3つの特徴をもう少し詳しくお話ししましょう。

 

(1) 入居者や、その家族の運営への参加

自分の住む家をどう維持するのか、誰と住むのか、どんな人が職員になるのか、そのようなことを入居者も加わって決めるということは、施設はいうまでもなく、グループホームでもなかなかできないのが現状です。

運営委員会方式のグループホームでは、このような大切なことはすべて運営委員会で決定します。そしてこの運営委員会には必ず、入居者の代表が入っています。全てがうまくいっているわけではありませんが、自分たちの暮しの場のことを、住んでいる人が加わって決めるという仕組みになっています。

 

(2) 住む人の障害の程度・種別を問わない

運営委員会方式のグループホームの母体になった地域作業所には、障害の程度・種別を問わず、さまざまな人が通所しています。ですから、そこから生まれてきたグループホームも当然、障害の程度・種別を問わないことを原則にしています。地域で暮らしたいという障害をもつ人たちの思いは、障害の程度にかかわらず、共通した思いだと考えているからです。

この結果、予想を超えた変化が生まれました。グループホームができる以前は、障害種別ごとに当事者組織があり、特に身体障害のグループと知的障害のグループの間では交流することはほとんどなかったのですが、グループホーム連絡会の活動の中でお互いの交流がずいぶん進んできたのです。

身体障害をもつ人たちは、障害者自身が組織をつくり、発言し、参加することを目差して活発に活動をしていました。そうした障害をもつ当事者の活動の理念や、自立生活を目差す活動に、知的障害の肉親をもつ家族や関係者、そして、本人たちもふれ、大いに影響を受けました。また実践の過程から、制度やサービスが、同じような困難をもっていても、障害によって大きな開きがあることも分ってきたのです。

 

(3) バックアップ施設をもたないグループホーム

グループホームでの生活は「施設処遇」の延長でとらえるべきではありません。本来、入所更生施設は障害者を指導、訓練することを目的としていますが、グループホームで求められるのは、入居者の自己決定と援助です。

ノーマライゼーションという考え方も、入所施設での生活がアブノーマルであるという批判から生まれてきたことを忘れてはならないと思います。施設での生活への批判と反省からグループホームは生まれてきたのではないでしょうか。

グループホームが入所施設の分室であったり、「施設処遇」の延長であってはならないというのが、運営委員会方式のグループホームの出発点だったのです。

 

3. 横浜市の地域支援

 

グループホームだけで、障害をもつ人たちの生活を支えることはできないのは当然です。バックアップ施設をもたないグループホームを上手に運営し入居者の生活を支えていくために、私たちは不十分ながらもいろいろな試みをしています。

 

(1) 横浜市在宅障害者援護協会

横浜市の大きな特徴は(財)横浜市在宅障害者援護協会(略して「在援協」と呼んでいます)という地域作業所や運営委員会方式のグループホームを支援する組織があることです。

 

 

 

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