買い物だけ世話人さんに頼み、簡単な調理は妻の豊美さんがやっています。しかし、どちらかというと、世話人さんが全部自分でやってしまう方が楽、というぐらい「自分たちでする」ことへの援助は大変らしいのです。ガスコンロ、床は気をつけないとビシャビシャに濡れていることがあります。お肉を切ったまな板でそのまま野菜を切る。ちょっと注意すると口ごたえはする。こんな日常ですが、お互い気心も知れているし、彼らは主体的に暮らしているといってよいでしょう。
5. 県営住宅新築713号室4DK
このグループホームは、平成6(1994)年に始まりました。平成8(1996)年公営住宅法が改正され、現在は、グループホームの公営住宅使用は可能になっていますが、ここの場合、モデル事業として始まったので、家を借りるまでにいろんなドラマがありました。
県の障害福祉課を通じて住宅課まで話をもちあげ、住宅課が建設省に足を運んでくれるようになるまでには、すでに実施しているグループホームに案内して、入居者や世話人に会ってもらったり、いろいろ議論もしました。今考えると、熱意をもって様々な課題をクリアしようとする住宅課の担当者と私たちの間の人間関係が結果的には19倍という倍率の公営団地でのグループホーム設置につながったと思われます。
隣に神戸の震災被災者が越してきていたこともあって、住民同士が「助け合う」という素地はますます強くなったように思っています。
ここには男性4人がそれぞれ個室をもって暮しはじめました。こうして4年間暮らしてきましたが、最近、この中から「一人暮し」を希望する人が出て、本人と世話人とで1DKに移る準備を進めました。もちろん住居さがしは、私達がバックアップしましたが、家具調度品などは全部本人が世話人と相談して決めたそうです。本人も輝き、世話人も輝き、この変化を見ている側も思わず嬉しくなってしまいます。自閉的傾向が強くて会話も不自由だったその人に、積極的な意志の力が見え始めたのです。その人らしさに私たちがどれだけ付き合えるか、その人の望む環境を準備することが私たちにどれだけ可能であるかが問われていると思います。
6. 一戸建て4LDK(3人)と1DK2戸(3人)
夕方7時40分、ホームから世話人の島さんが、帰ってきました。
「お疲れさまでした、遅かったんじゃない?」「ええ、麻西さんのところで話し込んでたんです。」
「えー!何かあったのォー?」
「何もないけど、最近彼と話せるようになって、それが楽しくて!」
島さんは、平成7(1995)年認可のグループホーム、鉄筋の一戸建4LDKに生活する3人と、最近、このホームから一人暮しを希望して少し離れたところのマンション1DKに引っ越した安田さんの世話をしています。
安田さんは一人暮しをしたいとは言っても、ご飯をつくれるわけではないので、食事はその日によって4LDKのホームに食べに行ったり、持ち帰ったりしています。金銭管理もほとんど世話人さんに頼まなければなりません。つまり、このような人も、一人暮し(自立生活)をしたいと思えばできることを証明しようと、工夫をしてみたわけです。島さんは、グループホームで勤務が終わった帰りに、安田さんのところにホームキーピングに行った帰りだったのです。
話題になっている麻西さんは、グループホームのメンバーではなく、安田さんと同じマンションの1階・1DKに気の合う友人と共同生活をしているのです。島さんは、この2人の世話も引き受けてくれています。