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「良き企業市民」活動の提案

 

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山下光二(全日本空輸株式会社専務取締役 東地区統括)

 

先のフォーラムにおける私の発言を基に少し補完をし、フィランソロピー育成のための提案としたい。

第一は「良き企業市民」活動の更なる展開と定着化である。フィランソロピー活動の原点は個人(市民)に拠るものであることは当然である。ちなみに、NPOグループの収入源に占める民間の寄付の割合を日米で比較すると、わが国は一%、米国は一九%である。米国の民間寄付額がそれ程大きくないのも意外であるが、その中では個人の割合が七八%を占め、企業はわずかに一〇%に過ぎない(今田忠氏監訳『台頭する非営利セクター』より)。

フィランソロピー活動の先進国である米国とわが国を単純に比較することはあまり意味がない。フィランソロピーは各国の風土・社会教育のシステムなどに深く関わっているからである。そこで私は、現在の日本において現実に展開できるシステムとして「良き企業市民」活動の定着化を促したい。

ここ一〇年の間でわが国のこの分野における関係組織の発展は目を見張るものがあるが、未だ景気の動向等に左右され過ぎ、定着しているとは言い難い。フィランソロピーの定着化には、この活動のリーダーの確保が肝要である。勿論この運動を定着させるためのバックアップ体制(例えば更なる寄付金に対する税制上の優遇措置)の整備を行う必要性は論を待たない。

第二に必要なのは「教育制度」のピッグバンである。フィランソロピーを実践する人は、社会から自然に尊敬される人々である。例えば、米国では小学生から「良き市民」になれとの教育が行われている。

一例としてALL-AROUND STUDENTという表彰が学年末に行われるが、その評価は三分の一が学業成績、三分の一が学業以外の行動や社会性などで、残りの三分の一はボランティア活動を中心としたコミュニティへの参加度合いが考慮される。受験一本の日本のシステムとは根本的に評価基準が異なる。米国の子供は、フィランソロピーの何たるかを体で覚えていくシステムの中で成長していくのである。

今後日本で、長期的展望に立ってフィランソロピーを育成するには、国立大学の民営化など教育制度の改革が不可欠だろう。

 

 

 

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