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土野 基調報告をされた河合先生が、産経新聞のコラム欄で「現代において個人のなし得る最大の社会貢献は、子育てである。これは一大事業なのだ」というふうに言っていらっしゃる。日本財団のこのフォーラムはフィランソロピーの現状と未来を語るためですが、河合先生流に言うと、フィランソロピーなどという前に、まず子育てをしっかりやってくれということになるのでしょう。

そこで、最近「教育」について、個人的に印象に残ったことをお話しいただけますか。

樋口 私の孫などを身近に見ていますと、やはり一番いいのは「体験学習」なのではないかという気がします。世の中にはいろいろな人がいるということを身をもって知ることができるからです。

土野 お孫さんはおいくつですか。

樋口 小学校四年です。私の妻が孫に経験させているのは、東京の「山谷」に連れていって、ホームレスに近い人たちににぎり飯とかパンの切れ端を配るというボランティアです。あそこには寒い日に着るものがない人もいて、そういう人たちには毛布を渡す。このようなことを経験することによって、人間というものの見方が変わってくるだろうと思うんです。学校だけではわからないことがたくさん出てくるのではないでしょうか。

それから、日曜日に教会に出入りしていますと、そこでまた違った環境の子どもとも付き合うことができます。いろいろな子と接することで、多様性が出てくるわけです。

これからの時代は、こうした多様性というか、ものの見方はたくさんある、ということを教えることが大切になっていくのではないかと思うんですね。

そのうえでいちばん大事なことは、他人に対する熱意だと思います。その熱意が出てくる前提として、まず自分に対する自己点検が必要になってきます。

それから、人間には必ず欠陥がありますから、それに対する蔑みも必要です。まずそうしなければ、改革になりませんから。この三つが組み合わさっていきますと、結果としていいように思います。枠にはまった「教育」というのではなく、自然にそういうことが身につくようにしてしまうことが重要なのではないでしょうか。

河合先生の言われる「一大事業」を実践するには、″自分がどう思うか″ではなく、″他人から見てどう思われるか″というふうに、他人との関連で自分を考える訓練がいちばん大事でしょう。自分を中心に考えていくと、どこまでもわがままというか、抑えようのないものになりますね。

そこで、いまできることを確実にやるという勇気が必要になってくる。同時に、いまできないことにも耐える精神力も大事です。肉体的にも知的にも、金銭的にもできないことは確実にあるわけですから。それに加えて、知的な判断力も持っているということが教育にはいちばん大事なのではないかと思いますね。

加藤 樋口さんのご意見にはことごと

 

 

 

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