山間僻地診療所及び後方病院における消化性潰瘍治療(第二報:その後の経過)
―背景因子との関連;及び Hellcobacter pylori除菌後の再発抑制効果を中心に―
和歌山県・洗心会玉置病院 中田 博也(元:大塔村僻地直営診療所)
留置 辰治・木下 正博・玉置 幸子・玉置 英人
要旨
消化性潰瘍患者を対象にH.pylori除菌療法を行い,治療効果と背景因子との関係及び消化性潰瘍の再発率について検討した。消化性潰瘍患者101例を対象とした。各除菌療法の除菌成績と副作用は,LAC群(Lan-soprazole(LPZ)30mg,Amoxielliin(AMPC)1500mg Clarithromycin(CAM)400mg 2週間併用)において各々85%,20%で,LCP群(LPZ 30mg,Polaprezinc(Pola)150mg,CAM 600mg 2週間併用)において70%, 5%で,LCAP low dose群(LPZ 60mg,CAM 600mg,AMPC 750mg,Pola 150mg 1週間併用)において83%,6.7%で,LCAP high dose群(LPZ 60mg,CAM 600mg,AMPC 1500mg,Pola 150mg 1週間併用)においては97%,10%であった。生体側の要因として年齢が重要で高齢者において除菌率が有意に高く,H.pylori除菌例において消化性潰瘍再発率が有意に抑制された。特に高齢者の割合の多い僻地医療では除菌療法の効果がさらに期待できる。
I はじめに
近年,消化性潰瘍の治療が大きく変わりつつある。その原因は,1983年に発見されたHellcobacterpylori1)(H.pylori)にあり,除菌をすることにより消化性潰瘍の再発率を大幅に抑制し,自然史を変えうることも明らかとなってきた2)。そのため潰瘍治療の中心は制酸よりH.pylori除菌へと欧米では変わりつつある。我々は以前より消化性潰瘍に対してH.pylori除菌治療を行い報告してきた3)。また筆者は自治医科大学卒後の僻地勤務終了後,山間僻地診療所の後方病院に勤務し,山間僻地診療所及び後方病院で行ったH.pylori除菌治療後の消化性潰瘍患者の除菌後の経過を観察し得たので,消化性潰瘍のH.pylori除菌後の潰瘍再発の検討を中心に,背景因子との関連及びその後の新しい除菌法について報告する。
II 対象
当院及び当診療所にて1994年4月から1997年8月までに上部消化管内視鏡検査により消化性潰瘍と診断され,インフォームドコンセントの得られた患者101例(評価可能100例)を対象とした。これらの症例中,上部消化管内視鏡検査による消化性潰瘍再発の経過観察をし得た41例について再発率を検討した。
III 方法
A. 除菌方法
LAC群(図工):Lansoprazole(LPZ)30mgを6または8週間投与し,LPZ投与開始時にAmox―iclllin(AMPC)1500mg及びClarithromycin(CAM)400mgを2週間併用した4)5)。
LCP群(図2):LPZ 30mg及びPolaprezinc(Pola)150mgを6または8週間投与し,LPZ投与開始時にCAM 600mgを2週間併用した6)。