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第12章 結語

 

第1章で述べたように本レポートはPhase 1の需要予測とコスト見積のレビューが主体であるが、同時にその他の章で種々のコメントを述べた。以下にこの中での主要ないくつかについてコメントを列挙する。

(1)需要予測

2011年に全ネットワークが完成するという前提で2011年のPhase 1のルートに対する需要予測がなされている。2011年の全ネットワークが完成していなければ2011年のPhase 1のルートに対する需要予測は少なくなるであろう。又開業時の2002年の需要は更に少ないものとなろう。財務分析においてはこの点に注意を払う必要があろう。

(2)列車運転

(a)Red LineとYellow Lineの共用する区間が存在するが、将来輸送上のネックとなるであろう。立体交差等によりYellow LineとRed Lineを分離するルート設計を検討すべきである。

(b)折り返し運転のための現在の駅配線では、プラットホームで客扱い後、引き込み線に列車を引き込みその後再びプラットホームに戻し客扱いをし、出発する事になっているが、この方式では折り返し2分は困難である。駅前方にシーサスクロッシングを設けて折り返し線によらず直接折り返しを行えば2分折り返しは可能である。

(c)車輌基地への分岐点が駅中間に配置されているが、この位置が明示されていない。分岐点を駅に作れば列車の折り返しも可能な配線とする事が出来る。

(3)環境影響アセスメント

ELRTプロジェクトの実施により(With‐Project)、空気汚染、道路事故、トラフィックジャム等、道路輸送によって惹起されるバンガロールの環境劣化現象は改善する事が出来よう。即ち本プロジェクトは都市交通を改善し、バンガロールの環境条件を改善できるものであり、“環境改善プロジェクト”と定義出来よう。日本政府はOECDメンバー国の同意の下に、このような環境改善プロジェクトに対しては、非常に有利な条件即ち年利0.75%、40年返済(内10年は据え置き)という条件でOECFローンを提供出来ることになっている。

ELRTプロジェクトが実施されない場合、バンガロールの将来の環境の劣化状況を明確に示し、日本政府が本件を環境改善プロジェクトとして理解するようにする事が望ましい。UBTSLは日本政府に円借款を求める場合はこのことを十分留意すべきである。

(4)Phase 1のコスト見積

JARTSの見積はUBTSLの見積より約30%高い。この差は主として土木構造物と軌道のコスト差に基づくものである。システムについてはJARTSの見積とUBTSLの見積の差はほとんど無い(2%)。車輌についてはUBTSLのコスト見積はJARTSの見積より約13%少ない。ソフトのコスト即ち表3.1-2の項目22〜29のコストはハードコストの約38%を占める。ソフトのコストは本プロジェクト事業体の政策によるところが大きい。

エンジニアリング、管理、建設マネージメント等のコストは鉄道建設の経験のあるインド国内のコンサルタントや専門家を活用する事により減ずることが出来よう。予備費やプロジェクト保留コストは、プロジェクト建設中のリスクに対する企業の考え方によるところが大きい。

上記のレビュー結果として、UBTSLは土木構造物と軌道コストを再確認してほしい。インドでは鉄道土木構造物や軌道の建設の経験が豊富であるから、このような確認は容易に出来るものと信ずる。

(5)建設スケジュール

Phase 1の開業を2002年に行うことは極めてタイトなスケジュールと思われる。建設期間を短縮するためには、財源確保のための期間を出来るだけ短縮するとともに、労働者や場所打杭打ち機の数を増加させて土木構造物の建設期間の短縮をはかる必要があろう。UBTSLは建設スケジュールを確認されることが望ましい。

 

最後にJARTSはUBTSLの熱心で親切なご協力に対して感謝の意を表する。

終わり

 

 

 

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