「えっ、この森を壊して万博をやるのですか?」これは、初めてこの海上の森を訪れた人のほとんどが口にする言葉です。それほどこの森は動植物が豊かで、訪れた人に万博とは無縁の存在と思わせるような場所なのです。
われわれ愛知県支部がここで探鳥会を始めて六年近くになろうとしています。その間に観察された野鳥は119種で、そのほとんどが山野の鳥であることを考えると、いかに多いかが容易に窺えると思います。
中でも危急種のオオタカはこの森のシンボルともなっており、県支部の万博反対のステッカーのモデルにもなっています。昨年の繁殖期に東京からオオタ力の専門家を呼んで繁殖調査をしましたが、営巣しそうな木の回りには足跡だらけで、同時に調査をしていた調査会社がどうも妨害をしたと思われるような状況で結局繁殖は認められませんでした。しかし、われわれのメンバーの粘り強い調査では、この森の上空でディスプレイフライトが観察され、人為的な妨害さえなければ繁殖の可能性は十分あると思われます。また最近では絶滅危惧種のヤイロチョウも確認されており、この森の包容力を感じます。
ここでわれわれは探鳥会以外にも毎月一回「海上カレンダー」と名付けたホタル観察会、シデコブシ観察会、秋に鳴く虫観察会などのイベントを行っており、一般の市民もたくさん参加しマスコミも積極的に取材、報道をしてくれています。また有志でキャンプをして、夜のヨタカ、フクロウの声を楽しんだりしています。
この森を守る運動は、当支部だけでなく他のいくつかの自然保護団体も行っていますが、その全員がこの森を一生の友だちにしていきたいと言っていますし、もしこの森が無くなったらどうして余暇の時間を過ごしていいのか分からないとも言い合っているところです。
全国の自然を守りたいという人たちと連携してここでの万博開催を何とか阻止していきたいものです。皆さんのご協力をお願いするとともに、ぜひ一度この森を訪れていただきたいと思います。
(もりしま・たつお/愛知県支部・編集長)