里山シンポジウム ご挨拶
(財)日本野鳥の会 会長 黒田長久
日本人の“古里”ともいえる里山が近年荒廃しつつあり、野鳥の会では1996年からその自然保護を重点事業としています。本日のこの公開シンポジウムは、志を同じくされる個人や保護団体のご参集を得て、有意義なものとなると思います。ご多用中お集まりいただきありがとうございます。
里山は町や村の後背地や居住地周辺の、多くは人手の加わった二次的自然植生の丘陵、山裾、それに草地や湿原も含め、地元住民の日常また季節的な、休養、保養、教養の場となり、一日に云えば“自然と人とのバッファーゾーン”であります。里山の保護は、第一に人の生活に直結し、第二に郷土愛を高め、第三に人と自然の共存の和の原点であり、その地方の原植生、原産動物の保護と復元、特産希種の保護の役割も果たします。また、エコツーリズムによる住民全体の保全も考えられ、日本では労働短縮による余暇利用にも取り入れたいものです。
里山自然は地方ごとに特徴があり、その保全には官、学、民、地方の四者協力一致が必須条件であります。近年、自然保護の効果で野生鳥獣の人里進出が始まっており、人との共存、農作物への被害防除、クマなどの危険対策なども必要となりつつあります。
そのほか、今日のシンポジウムでいろいろ今後への論議が交わされることを期待し、ご挨拶といたします。