日本財団 図書館


的理解というものは、教科書やアトラスだけでは到底できないことであり、肉眼で見てこそ何とか分かるものであった。

この日で実際に人体の構造を見て思ったのは、ありきたりな感想であるかもしれないが、人間の体というのは何と精巧に、うまくできているのだろう、ということだった。もとは一個の受精卵だったものが、こんなにも複雑に分化して機能しているというすごさを思った。その思いは心臓をとりまく冠状動脈や弁の構造、膝の靭帯の様子、耳小骨の緻密さを見たときに強い実感として感じた。また、日常生活において体を動かしたりするときに、「あ、今あの筋肉を使っているんだな」とか、「夕食に食べたあれはそろそろ小腸の、空腸部分くらいに来たころかな」というように、″内からの視点" を持てるようになった。(ちょっと変かもしれないけれど。)

解剖の試験前、特に最後の試験であるTEST3の前は思い出深いものがある。TEST3の範囲である頭部は特に複雑で、覚えるべきことも多く、友達数人と八時頃まで復習した。解剖が始まった頃には、こんな遅くまで御遺体とにらめっこしても平気になるとは思いもしなかったのであるが、よく勉強している友達に色々と教えてもらいながら、もう一度構造や機能を見ていくのは非常に有意義で、楽しくすらあった。その後、日頃の勉強不足を補うべくと下宿に帰って教科書とアトラスを広げたものの、あまりの眠さに、このまま家にいては寝てしまうと思い、解剖関係の本一式をひっさげて、早朝まで開いている

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION