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ものであるという認識が私の中で大きく膨らんでおります。

その神聖な御遺体を前にして、本当に自分がこの方の御遺体に触れても良いのかという気持ちになりました。

最初の実習の時には、私は、緊張のあまり数時間にわたって、ずっと解剖用具を強く握りしめていたため、翌日から暫く手がしびれたようになっていたのを今でも覚えております。

実習が始まって一週間もすると、実習直前の不安も拭いさられ教科書や写真の図で見ていてもよくわからない事が、実際に見たり触れたりすることでとてもよく理解できるようになりました。

でも一番感動したのは、御遺体には一人ひとりそれぞれの個性があるということでした。

例えば、臓器ひとつにしても、およそ教科書に書いてある通りの形や大きさをしていますが他の御遺体と比べてみるとかなり違っており、きわめて新鮮で不思議な発見をしたような気持でした。

このようにして始まった実習を通して私達が学んだことは、一口で申しますと人の身体に対する畏れ、即ち畏敬の念でした。

人体の構造を実際に見る機会を与えて頂いたことによって、人間がどれほど緻密な構造を持った存在であるかを目の当たりにして驚き、更にはそのよう緻密さ繊細さを持った人間を、将来医師として診察する際の自らの責任の重大さに身の引き締まる思いが致しまし

 

 

 

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