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は、とても面白いように感じました。やはり、机上の学習だけでは得られないものが実習にはあるのだと思います。

しかし、決して忘れてはならないことがあると思います。それは、ご遺体は、あくまでご遺体であるということです。実習が進むにつれ、ご遺体は、「標本」の色が濃くなるように思います。臓器一つも、器官一つも、故人が数十年と使ってきたもので、私たちには想像が及びません。そういう意識を忘れず、残された実習に臨んでいきたいと思います。

 

解剖学実習

 

武田 直子

 

初めての解剖学実習の時、ご遺体と対面するまでは自分でも自分がどのような衝撃を受けるか想像もできず、とても不安であった。自分の班の台の前に立ち、班員達と白いビニールシートをめくると、女性のご遺体がビニール袋に包まれて横たわっていた。正直に言って、人間とはまた何か違う印象を受けた。ただ、ビニール袋をはずす時、何か怖くて硬直したご遺体の足首を強く握ることが出来なかった。

実際に実習を始め、ご遺体の胸部・腹部に

 

 

 

 

 

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