お父さんの失敗を知っているから、お父さんのようにはならないと思うわ」。
第1日には、これらのテーマのほかに《六つの別れ》(同誌7号掲載)を取り上げています。
第2日 離婚の際の必要な取決め
第2日目は、夫婦が離婚を決断して、今後のことについての取決めを交わす段階での出来事を扱います。
第1は、これまで夫婦でしてきたことの清算で、多くの場合、その中心は夫婦で築いた財産の分配です。子どもの今後の養育計画を話し合って、そこから経済の問題を考えるのが賢明です。
最近の離婚では、その7割以上が未成年の子を母親が養育し、別れて住む父親が養育にかかる費用の一部を負担するのが一般的です。
しかし、夫婦間の軋轢が尾を引いていると、子どもを養育する母親は、養育費はキッチリ払ってほしいが、今後の親子の生活には口出ししてほしくないと思い勝ちです。そうなると、養育費を負担する父親は「お金だけふんだくる気か」と反発し、話合いが難航する例が少なくありません。
また、母親は離婚後の家計に関する不安が強く、資産や養育費を少しでも多く得ておきたいと思います。しかし、抽象的な要求は、説得力が乏しいものです。そこで、母子家庭については、自立支援のためにとられている種々の福祉的措置を確かめて、具体的な生活設計を立ててみることです。その上で、子どものためにどのような生活を実現するかという視点から、生活が成り立つために必要な費用を説明して、相手に分担してもらうのが合理的です。
この場合、養育費の分担は、父母の収入の増減によっても、子どもの成長などによっても変動することと、生活を二つに分けるのですから、当面の生活水準は下がるということを、頭に入れておく必要があります。
取決めの話合いで最も大切なことは、離婚後も利害を上手に調整し、父母としての協力関係を作っておくことです。
第2日目には、このほか親権のこと、(同誌11号参照)、養育費分担額の計算方法(同誌10号参照)、取決めの内容とこれを書面にする方法、子どもの戸籍や氏の問題などについても説明しています。
第3日 離婚後の親子の関係と交流
第3日目は、夫婦が離婚し、新たな生活に入った段階の問題を取り上げます。
この日の最初のテーマは、離婚で負った、心の傷をどのように癒し、気持を切り換えて、明日に向かって歩み始めるかということです。
参加者のアンケート結果によると、別居中の人より既に離婚した人の方が、心情面でずっと安定していることが分かりました。離婚という決着が、気持を過去から未来に向け直す一つの転換点として役立っているためでしょう。恨みとか被害感情を抱き続けることはあまり生産的ではありません。新しい生活に積極的に取り組み、夫婦の問題では失敗したけれど、その他の面では引けを取らないことを、子どもに示したいものです。(同誌8号《感情整理と自分の立直し》参照)
セミナーの最後のテーマは、男性と女性という性質の異なる二人の親と子どもとの交流の必要性です。子どもは、よほど悪い思い出がない限りどちらの親とも親密でありたいと考えています。
そのため、親子の面会は大切ですが、親同士が感情的に対立したままだと、他方の親と親しくすることは、一緒に生活している親を裏切ったように感じてしまう子どもも少なくありません。このような状況下で行われる親との面会では、子どもは気を使い、疲れます。この点は、双方の親がぜひ理解してほしいところです。セミナーでは、親子の面会を、子どもにとって負担の少ない楽しいひと時とするための具体的な心得などを話しています。(同誌12号《離婚後の親子の面会及び交流》参照)
参加者からは、「夫婦としての感情が先に立って、子どもの立場から考えることができませんでしたが、これからは父・母の関係に変えていこうと思いました」「同じ問題で大勢の人が悩んでいることを知り、自分だけが不幸だという孤立感が薄れ、頑張れる気がしてきました」など、「気持の整理」に触れた感想が多数寄せられました。また、面会と交流については、多くの人が「必要性を理解し積極的に取り組みたい」とする反面「理屈としては分かったが、現実にはとても難しいことです」という率直な感想も述べられています。