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家庭問題情報誌『ふぁみりお』第7号から抜粋

六つのわかれ

-子どもがいる夫婦のための離婚セミナーから-

 

「離婚は、両親から夫婦としての関係を断絶させる。しかし、子の父母としての《今後も創られていく関係》まで壊すものではない」これは、アメリカの文化人類学者ボアナンの言葉です。夫婦としてはもはや心が通わなくなったのに、子どもがいるので別れる決心がつかないと悩むあなたのために、ボアナンの「六つのわかれ」について考えてみましょう。これらをクリアすることが困難なときには、早めに専門家の援助を求めてはいかがですか。

 

?@ 憎しみの感情とのわかれ 「あの屈辱を思うと頭がぐらぐらとして怒りがこみあげてくる」とか「もう愛してなんかいない。でも忘れられない」などの感情をどうやって整理したらよいのか。愛する人の喪失に終わるこの情緒的わかれは、攻撃、自責、見捨てられ感、報復心などの執拗な拒否感情や嘆きとの対決です。これをときほぐすために、どれほどの歳月を要することになるのか、孤独な鎮魂の作業が求められます。

?A 法律上のわかれ いままで続いていた結婚を法的に解消することに伴う身分上の変化は、手続が進行するにつれて、時として本人自身に当惑を感じさせるものです。もはや妻でも夫でもなくなる自分を受け入れ、さらに、相手の非を一方的に責めることに終始するのでなく、現実的な解決方法を選択できるためには、手続の過程で、丁寧にわかれの儀式を積み重ねることが大切です。離婚届を出すことが、その一連の儀式の厳粛なフィナーレとして受け止められるでしょうか。

?B 経済上のわかれ 離婚への合意がきちんとできていない場合には、合理的でない理由で不当な財産上の請求をして譲らないとか、逆に、「金額などどうでもいいのです」となげやりになってしまいます。今後の生計維持のための実質的な話し合いを積み重ね、小さくても自分の青空を持つためには、恨みや意地から開放された自分が交渉の場に存在することが大切です。

?C 共に親であることとのわかれ 親は、どうしたら、いつなら、子を傷つけないで別れることができるかと迷いますが、離婚する、しないに拘わらす、また、その時期に拘わらず、夫婦の紛争のなかで、子はすでに傷ついているのです。結婚の失敗は父母の間の問題であって、子の責任ではないことをきちんと伝えるならば、そして、両親が共同で監護できなくなった後でも、親子であり続けるのだとの安心感をプレゼントできるならば、子は十分に救われるはずです。心配ばかりせずに、子の力を信頼してほしいものです。

?D 結婚によって得た社会的地位『妻の座』とのわかれ 親族や共通の友人が、もはやカップルとして認めてくれないと感じたときは、怒り、絶望、困惑の感情が先立つものです。旧い絆との断絶は、それを自ら求めている場合でも喪失感を伴うもので、こんなはずではなかったと思うこともあるでしょう。別れには、このような両面感情を克服することが必要です。

?E 人間としてのわかれ 夫婦の関係は、人間関係の中でも最も強い依存と結合が生じる関係です。もはや愛していない相手であっても、それからの分離によって一時的な不安定の状態が生じて不思議はありません。しかし、依存から訣別し、精神的に密着していた相手なしに生きる自立を学ぶことによって、人間としてのわかれの作業を成就させることができるでしょう。

 

ご存知ですか

戸籍謄本(抄本)がこう変わります

 

平成7年3月13日から、東京の一部の区(豊島区および台東区、4月1日から新宿区)では、従来の戸籍謄本に代え「全部事項証明書」を、戸籍抄本に代え「個人事頂証明書」をそれぞれ交付しています。これは事務の省力化やスピードアップを図るためコンピュータを導入し、磁気ディスクに記録する方法により戸籍を調製することになったためです。交付される証明書はA4版縦型の横書きで、「複写」という透かし文字が出るように工夫されています。氏名に使われている誤字、俗字も所定の文字については対応する正字で移記される扱いになっています。今後は、全国の市町村でも戸籍の電算化が実施されることになるでしょう。

 

 

 

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