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1-4 医療・保健・福祉分野

 

医療・保健・福祉分野は、携帯情報ツールを様々な方法で効率的に活用できると思われる分野であり、既に一部の地方公共団体では、携帯情報ツールを利用した運用も実施されている。

医療分野での入院患者を対象とした看護支援への適用は、比較的早い時期から検討されており、具体的には、看護婦が日常的な情報収集と、医師から指示される処方の実施経過の記録などを、紙とペンに替わって、携帯情報ツールで行うというものである。だが当初は、一部の公立病院で導入されていた携帯情報端末は重く大きく、画面も見にくく、反応も遅いなど、扱い難い側面が多かったため普及するには至らなかった。しかし現在では、看護婦の要求水準を満たすツールが多機種登場しており、患者データの後処理にかかっていた時間を大幅に短縮でき、看護の質の向上にも貢献できるようである。

また、保健・福祉分野での、保健婦による訪問医療指導や、ホームヘルパーによる訪問介護支援では、携帯情報ツールとICカードを効率的に活用し、保健指導情報や介護上必要となる情報をお互いに共用することにより、より綿密なサービスに役立てることが可能となっている。

福祉分野で実験的に始められた事例として、徘徊老人の位置探査システムがある。このシステムは、徘徊者が携行するGPS受信機と携帯通信機器が、徘徊者の位置を自動的にセンター側に知らせ、センター側のコンピュータで徘徊者を探査できるものである。徘徊者自体は、携帯情報ツールを操作しない。現状では、擁護老人ホームなどのシステムを導入する施設周辺の詳しい地図の整備にかかるコストや、老人に携帯させる方法など、解決すべき問題があり、普及にはしばらく時間がかかりそうである。 しかし、将来的には、遭難者の探索など、他の用途にも応用できると想定される。

また将来、携帯情報ツールの活用が大いに見込める分野として、介護保険の適用認定審査がある。介護保険制度は、平成12年度に開始される見込みがあり、この制度の下では、65歳以上の介護保険加入者を対象に、毎年3〜4回、70〜80項目にわたる保険契約の更新調査を実施することが想定されている。この更新作業では、調査員が加入者宅を訪問して調査する方法が適当と思われ、全調査項目もおおよそ確定しているため、携帯情報ツールが極めて効率的に活用できるものと思われる。

 

 

 

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