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短期間に多数のシステム化をした経験から振り返りますと、システム化に際し自分達の業務を原点まで帰って見直すべきだ、と強く思います。従来の手順に固執したり、何故という質問に答えられないまま、これがないと使い物にならないといった態度で機能要求されても、改善にはなりません。一年に一度使う程度の帳票類は、使う人が自ら処理できる仕組み(EUC)を用意し、システムに組み込む機能を厳選しました。どうも業務システムに、自動処理を求める傾向があるように思います。メーカーさんの営業も「こんなケースまで想定し処理できる」ということを売りにするようですが、あくまでコンピュータは支援であり、人が仕事をする事を再認識するべきです。間違えた処理をした時に「そういうことができるようにしてあるのが悪い」と言われると、業務担当者の役割や責任をどう考えているのかさびしい気がします。

アプリケーション・パッケージの評価は、従前のやり方を基準にするのではなく、導入後の姿を明確にイメージして、判断すべきです。少なくとも鳩ヶ谷市では、新規のOA化導入分野(財務会計や電子メール等)では、従前の流れにこだわらずに、電子ネットワークなればこそのシステム化ができたと自負しています。

 

5-6 今後の取り組みについて

 

長く担当でいて、業務の流れを把握し、これが一般的やり方だ、と自信を持ってやっているものでも、業者のSEさんに他の地方公共団体の最大公約数的やり方を聞くと、黒船来航の心境になります。当然、転入前と転入後の地方公共団体のやり方が違えば、市民にも不安を与えてしまいます。多様な住民ニーズに応える行政は、いうなればバイキング料理になっています。サービスによっては、そろそろ定食でもいい時期にきているのではないでしょうか。業務が定型化すれば、システム仕様も標準化し、アプリケーション・パッケージが普通になってゆくものと思われます。その時全方位を対象にした満艦飾的ものではなく、求める機能を選び組み合わせる、機能セグメント化が進んで欲しいと思います。そして、メーカーや地方公共団体が独自に膨大な費用をかけて開発し競いあうというスタイルから、社会全体のコストを最少にするような協調(共同開発)という方向へ進んでもいいのではないでしょうか。独自のシステム、接続の禁止という保護一辺倒から、社会コストの低減という新たな目的を重視すべき時代にきているように思えます。

今後、鳩ヶ谷市では、業務ごとに最も効率的になるアプリケーション・パッケージを選択し、複数の異なるシステムをLANで連携してゆくというスタイルになると思います。異なるシステム間のインターフェイスの調整が、システム部門の最大の業務になってゆくだろうと予想しています。そのためには、コーディングはしないが、システム構造やデータ項目、関連する業務などを理解しているシステム要員であることが必要です。将来的には、システム技術に長けるのではなく、業務を知りその中でのシステムの役割を理解することは、一般の職員にも求められるだろうと思われます。鳩ヶ谷市の職員は、情報技術者というより、システム的発想が出来る職員になってほしいと願っています。

 

 

 

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