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動物園における夜間開園に関する考察

―「ナイト・サファリ」「アドベンチャーワールド」を事例に―

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1. はじめに

動物園は観客に対して動物をより動物らしく見せるために展示形態を変化させてきた。文字や映像といった情報伝達手段を媒介としたさいには多くの情報が失われてしまう。これらの情報を補うために動物園は「自然環境の人工的復元」ということに重点を置き、その展示方法は棚で囲われた「檻式」から棚を取り払い、視覚を妨げない仕切りを用いる「無棚放養式」へと発展を遂げた。自然らしさを見せることで、観客に対して視覚的効果の増大を期待して動物園の展示形態は変化したのである。

形態の変化とともに動物の姿をただ見せるのではなく、何らかの付加価値を付けて見せる方法も考えられた。檻の中に動物が遊ぶであろう遊具を付けることに始まり、食事の姿を見せる、動物の持つ特性を生かした芸を見せることなどもおこわれてきた。

付加価値を付ける方法の観客誘致策のひとつとして新たな時間軸を設定する方法がある、夜間開園という考え方である。日中には見ることのできない夜間という視覚的には不利な時間にあえて動物を公開し、昼間とは異なる動物の姿を見せることを試みた展示形態である。本論では1994年10月に「アドベンチャーワールド」においておこなったフィールドワーク、1996年4月にシンガポールの「シンガポール動物園」「ナイト・サファリ」及び「ジュロンバードパーク」においておこなったフィールドワークと同年5月に「上野動物園」においておこなったヒヤリング、1997年9月におこなった「アドベンチャーワールド」飼育部林輝昭氏へのアンケートを材料に、夜間開園という展示企画を通して動物園観光に関する考察をおこないたい。

 

2. 日本における動物園夜間開園

日本の動物園では様々な展示企画が考案され、実行されてきた。上野動物園についてまとめてみると(表1、2)のようになる。また、1987年について詳しく見ると(表3)となる。リクレーションの場としての動物園が観客誘導のために動物芸を中心に様々な催し物をおこなっていたことがわかる。動物園は博物館的施設というよりも、珍しい動物を見るための場だったのである。

大阪府立天王寺動物園では開園の翌年である1913年から春と夏の年2回、それぞれ「夜桜開園」「納涼開園」と銘打っておこなわれ

 

 

 

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