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▼観光政策と自然保護政策との連携

現在、行革案の中で国土開発省と国土保全省という枠組みが考えられているが、観光が開発と保全のバランスの中で進められる政策であることを考えると、この二極分化論は好ましベかざるものと言わざる負えない。戦後の観光政策と国立公園政策との乖離がますます助長されるのではないかと懸念される。

そんな中で、ホテルの立地選定と国立公園の関係等、4期での国立公園政策との連携は、自然資源の観光的活用と環境保護を考える上でもう一度サーベイしておくべき議論であろう。また、5期において産業開発における観光資源の破壊に対して早めな的確な要請をしたことも注目に値する。

 

▼観光政策とリゾート政策との一体化

本論では、あまり触れられなかったが、戦前、特に4期では、国際観光政策とリゾート政策の一体化した展開がみられ、既存の避暑地への配慮や長期滞在を視野に置いた施設整備がされていた。本来、観光とリゾートは表裏の関係にあり、別々に政策的議論をしていくのは望ましくない。リゾート法による整備等も、国際観光政策の枠組みの中で活かしていけないだろうか。

 

▼大衆性、低廉化一途からの脱却

4期に大蔵省の融資によって造られたホテルは、今日でもわが国を代表する高級リゾートホテルとなって、良好なストックを残している。公共的な政策というと、大衆性が求められ低廉な施設整備に目が向きがちであるが、グレードの高い施設をきちんと造っておくことは、その後その地域が、観光地・リゾート地としては発展していく上で、有用なストックとなることを実証している。

 

▼アジアの重視

明治以降国際観光政策は、欧米中心主義で、宣伝等ソフト面だけでなく、ハード面でも洋式ホテルが優先される等、全体に欧米人のスタイルに迎合した形で整備が行われた点は否めない。しかし、近年はアジアからの来訪者の急増という、蓄積してきた政策の経験が活かされない現象がより顕在化している。さらに、アジアからの観光客は将来的に爆発的な急増が予測されているが日本に来てもらえるとは限らない。アジアの人々が魅力を感じる国際観光地としての施策展開を迫られている。その際、基本となるのは、かつての欧米人に代わってアジア人の国民的特性や観光的志向をきめ細かく考慮していくことであろう。

最後に、本論では、大まかな流れの把握やマクロな政策に研究の論旨の重点を置いたために、あまり触れられなかったが、議事録等を読んでいると実にきめ細かな提案がなされている。これら先人達の知恵・アイディアも詳細に検討すれば大いに参考になるであろう。

以上で、本研究の本論は終わりであるが、最後に紙面を借りて、この論文を完成するにあたって多大なるご指導.ご助言を頂いた東京工業大学の渡辺貴介教授に感謝申し上げたい。また、ヒアリングに快く応じて下さった各界の関係者の方々にもお礼申し上げる。

 

 

 

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