4. 各期における国際観光政策の展開とその特徴
3での時代区分に従って、各時代の特徴を総括的に述べる。
(1) ?期(開国〜明治44年、小区分1、2期):国際観光政策の萌芽の時代
?期は、開国による外国人の入国に伴い、国際観光政策が萌芽する時代である。この期は、国際観光政策が他の政策推進のための補助的な役割を果たすという認識はあったが、国際観光政策を独立した体系的政策として実施してはいなかった。従って、政府部内に中心的政策推進機関は設けられていない。ただし、政府や政治家は国際観光に係わる民間団体等に出資を行っている。
小区分1期(江戸末期〜明治25年)は、未だ攘夷の気風が残る日本人と外国人との衝突を避けるために、外国人に旅行制限を課していた時期である。すなわち、国際観光政策が治安維持を目的としていた内政政策補助期と捉えられる。
小区分2期(明治26〜44年)は、国を挙げて不平等条約の改正を目指し実現していった時期である。それゆえ、開化された文明国としての姿を外国に示すための手段として国際観光政策が採られた。国際観光政策により日本の国際的地位の向上が目指された外交政策補助期と捉えられる。その端的な例証は、外国人旅行制限の緩和や撤廃が不平等条約改正の交渉材料となり、その成就後に「内地雑居制」(明治32年)が施行され、旅行制限が撤廃されたことである。
(2) ?期(明治45年〜昭和17年、小区分3、4期):国際観光政策の確立の時代
?期は、期末の来訪外客の増加や欧米での観光政策隆盛の認識、及び「観光」という言葉の普及等により、外客が訪日することの意義や効果が意識され始め、それらを政府の国際観光政策実施体制の確立により引き出そうとした時代である。
小区分3期(明治45年〜昭和3年)には、大隈内閣諮問機関「経済調査会」が外貨獲得を目的とする国際観光振興策を決議し、政府に提言した(大正5年)。このように国際収支の改善という観点からの国際観光政策実施を、政府が初めて正面から政策問題として取り上げた時期である。すなわち、経済的国際観光政策確立期と捉えられる。
小区分4期(昭和4〜17年)は、昭和初頭の不況から日本経済が立直れなかった時期である。そのため、引続き外貨獲得のための総合政策が強く模索され、その中で国際観光政策が本格的に実施される。
政策推進の中心機関として初めて政府部内に「鉄道省外局国際観光局」が設置され、その諮問機関「国際観光委員会」も誕生した。これにより、国際観光政策は政策としての地位を明確に確立した。