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[各公演紹介]TIF'97はバラエティに富んだプログラムを提供し、社会的に大きな注目を集めた公演が多く見られた。ここでは、主に各製作者のコメントをもとに作品の成果等をまとめてみた。

 

国際共同制作作品

 

演劇集団円 イプセン2作品公演

『ゆうれい』『ヨーン・ガブリエル・ボルクマン』(スタッフ)

作:ヘンリック・イプセン

演出:『ゆうれい』…タリエ・マーリ

『ヨーン・ガブリエル・ボルクマン』…安西徹雄

翻訳:毛利三彌 美術:畑野―恵 照明:田中喜久夫

衣裳:渡辺園子 音響・効果:高橋巌 ほか

(出演)

『ゆうれい』…岸田今日子/三谷昇/橋爪功/井上倫宏/唐沢潤

『ヨーン・ガブリエル・ボルクマン』…仲谷昇/平木久子/

草野裕/千種かおる/井出みな子/原千晴/大竹周作/高橋理恵子

 

わが国の現代演劇の初期に最も強く影響を与え、現在でも世界的に上演され続けているイプセンの新しい解釈に挑戦。ノルウェーの演出家タリエ・マーリとの共同作業で作り上げた『ゆうれい』はテンポの速いサスペンス仕立ての演出と、岸田今日子をはじめ、三谷昇、橋爪功らの演技は高い評価を得た。観客動員にも成功し全公演満席で終了。安西徹雄はイプセン作品初挑戦の『ヨーン・カブリエル・ボルクマン』で重苦しいだけの悲劇と見られがちなこの戯曲に喜劇性と笑いを持ち込んだ解釈が新鮮と評価された。2作品とも再演の可能性の高い作品となった。

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竹屋啓子コンテンポラリー・ダンス・カンパニ-「ダンス東風〜アジアの芸術家とともに〜

『風の足跡・息の石』」

 

(スタッフ)

演出・美術:佐藤信

構成・振付:五井輝/ナラポン・チャラスリー/竹屋啓子

音楽:近藤等則/イ・ワヤン・サドラ 照明:齋藤茂男

音響:市来邦比古 ほか

(出演)

竹屋啓子/大西いづみ/小椋康子/李香蘭/三浦ゆかり/関雅子/

丹澤照枝/松原佐紀子/下村明美/大西真紀/小久保見起/

長石恵理可

五井輝/ナラポン・チャラスリー/海津義孝/

岡庭秀之/栗山雅嗣/田口市広

 

この作品は、これまで竹屋啓子C.D.Cが進めてきたアジアの芸術家とのコラボレーション企画「ダンス東風1」の一環で、'93年に東京・青山で初演し、好評を博した「ダンス東風1」をより発展させた新しい作品である。タイからダンサーのナラポン・チャラスリー、インドネシアからはイ・ワヤン・サドラを初めとする音楽家に加え、今回は近藤等則の参加によリガムランとトランペットの共演でライブ性の高い作品にもなった。'97年にオープンした世田谷パブリックシアターでは、開場以来初めて鳥屋口を開け、客席に楽士席を設ける等劇場の空間もより生かされた作品であったとも言える。

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『リア王』

 

(スタッフ)

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(出演)

柳仁村/MARKUS SEIDENSTIKER/LIZ JAHREN/崔至恵/

方銀珍/MARK D.STALEY/朴榮哉/MARCUS SCHAFER/

趙徳賢/THOMAS KOCH/中村拓/ウネモト・ユキ/丁奎秀/

南潤吉/辛美敬/趙珠山/ARIANE PIARRE/LARISA LOPEZ/

ELENA PAP

 

この作品はITI/ユネスコ本部の企画事業で、93ヶ国のITI加盟国のうち6ヶ国のセンター(アメリカ、 ドイツ、メキシコ、ブルガリア、韓回、日本)が共同で制作したもので、'97年秋にソウルで開催されたITI世界大会の折に初演された。ITI日本センターは、今回は制作を外部に委託する方法をとったが、演劇制作、公演準備など、ITIにとっては初めての出来事で、驚きと勉強の連続だった。劇評など好評だったが、4回公演で観客数780名という結果は少々残念でもあり、集客ネットワークにも課題を残した公演だった。

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『マクベス』

 

(スタッフ)

作:ウイリアム・シェイクスピア 訳:松岡和子

演出:アレキサンドル・ダリエ 美術:マリア・ミーウ

音楽:エイドリアン・イネスク 照明:山口暁 音響:高橋巌

ヘアメイク:高橋功亘 舞台監督:大垣敏朗 ほか

(出演)

段田安則/南果歩/大高洋夫/吉見一豊/山崎清介/久松信美/

高田恵篤/中村亮/福士恵二/八嶋智人/錦部高寿/木内里美/

小山勝広・木下慧人(ダブルキャスト)

 

ルーマニアの演出家アレキサンドル・ダリエが、マクベス夫妻の悲劇を、人間が自分の運命をどう選び取っていくかという『選択』の物語として描いた作品。今回はマクベスを段田安則、マクベス夫人を南果歩、そして小劇場を中心に活躍中の若い俳優たちで構成した結果、観客層は20代前半〜40代前半が多く、しかも男女の割合のバランスもとれていた。(アンケートにはシェイクスピアは初めてという観客も多かった。)国際共同製作であるが故、言葉や作業の進行上いろいろ困難もあったが、俳優たちと演出家間のコミュニケーションは緻密に行われ、新しい方法や精神面でも発見が多く、これらが舞合成果として結実した。

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<エドヴァルド・ムンクの生涯と芸術>

『ムンク生命の踊り』

 

(スタッフ)

構想・振付・演出:田中泯 音楽構成:野口実

舞台監督・照明デザイン:JEAN VINCENT KEREBEL

音響:PAL STEAD

《日本公演スタッフ》舞台総括:北条孝 照明:竹内右史 ほか

 

 

 

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