日本財団 図書館


3. 新しいシステム作りの必要性

第1章で述べたように、少なくとも、過疎地域活性化特別措置法の制定時(平成2年)までの集落整備の考え方は、「基幹集落の整備並びに集落の適正規模及び配置」(平成2年4月23日国地総(過)第43号各都道府県知事あて国土庁地方振興局長通知参照)であり、過疎地域集落再編整備事業についての国庫補助金(集落移転事業、へき地点在住居移転事業、定住促進団地整備事業)も、国庫予算に計上されている(8年度白書P226、227)。

もちろん、集落自身が移転を選択する場合もあり、その場合には、過疎地域市町村の財政状況からいっても、国、県等の適切な財政措置が必要なことは言うまでもないが、都道府県あるいは市町村当局の意向のみで、集落の再編成を進めることは、かなり困難であり、そういう形で推進すべきことではあるまい。このことは、第4章で紹介されている昭和56年度の過疎地域問題調査会の調査でもふれられており、同調査では、「伝統的な集落範囲は、もともと徒歩距離の基準で成立して(いたが)、モータリゼーションの普及により……その意義が、かなり大きく失われている。集落合併の実質は、まず当該集落間の道路を抜本的に改良することが糸口(であり、)集落会館や集落広場などの新設により合併の実質をさらに充実してゆくことになる。」としている。

同じく、第4章で紹介された島根県における平成5年度調査でも、共同作業が実際に行われることが少なくなって、集落代表者から「集落であること、同じ場所で生活していることの意味が変化してきたのか」と疑問が寄せられた例があげられている。

第1章で述べたように、過疎地域市町村では、都市部以上に、地域コミュニティすなわち集落の役割が重要である。住民の生活・生産上必要なことを、個人(家族、事業体)と行政とだけでカバーすることはできない。そこで、集落の機能が果たせるようにする新しいシステムが工夫されなければならない。

集落は、また、地域文化の創造、自然環境保全・活用に大きな役割を果たしている。

第4章でふれられている国土庁計画・調整局の平成8年度調査は、図のように、限界レベル2、限界レベル3の集落での現象出現率を提示している。「村祭りや伝統芸能の衰退」「森林空間の悪化」、「森林での災害放置」があげられている。新しいシステムは、それにも対応できるものでなければならない。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION