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すでに、最近の町営住宅の建設や住宅団地の造成、あるいは公共施設の建設は、こうした交通体系の変化を前提としてなされているが、集落の整備、集落道路網の整備もまた、これを前提としてなされるべきであろう。まさに、近い将来、この町の諸活動の中心が、峡谷の底から峡谷の上の台地へと移ることは必至と予想されるからである。

短期的には、現在の集落の住民の生活の便宜性、安全性を確保するための町道の整備、教育や福祉サービス・文化活動等を住民が享受できるような住民の輸送(送迎)システムを整備・拡充することが必要であろう。

さらに、長期的には、世帯が存続していけるための就業機会の確保が不可欠である。少数ではあるが、農業あるいは林業を主体とした世帯には、農林業振興策が望まれるし、大多数の兼業農家にとっては農外所得の場の確保が強く望まれよう。集落の事例調査でみたように、集落の存続は、各世帯に安定した農外所得があってこそ可能だからである。

また、バイパス沿いの集落には非農家が徐々に増えるとともに、非農家だけの住宅団地も形成されつつある。まさに、これは新しいタイプの集落の発生であり、従来からの伝統的な行事や共同作業を新しい伝統や作業にどう変えていくのかが問われることになろう。

地方、集落や世帯の消滅は不慮の出来事・事故・災害によることもあるが、一般的には予測される範囲内で、長期にわたる結果として生じるものであり、しかも世代交替期に大きな変化が生じるものである。したがって、集落の整備や移転についても、長期的視野から各集落を構成する世帯のあり様を踏まえて計画的になされるのが適切であろう。

 

 

 

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